引用:
お父さん、私この結婚イヤです!
あらすじ
皆に嫌われる悪女「ジュベリアン」。 愛した恋人からも、たった一人の家族であるお父さんにも捨てられ、寂しく死んでしまった悪役…。 そんなジュベリアンに生まれ変わったって? こうなった以上仕方ない。 お父さんのお金を思う存分使って、派手なお嬢さんライフを送ろうとしていたのに、 サイコパスな皇太子が私の結婚相手だなんて! それなら方法はたった一つ、契約恋愛だけ。 その相手はお父さんの教え子がいいだろうと結論を出した。 その男が皇太子であることも知らずに…。
本文
『公女様の特別なお茶を利用したティーパーティーを私も期待しております!』
ジュベリアンはお手洗いで手を洗いながら、先ほどローズに言われたことを思い出しため息を吐いた。
(知らない間にティーパーティーを開くことになるとは…。)
ジュベリアンが項垂れていると、誰かに話しかけられた。
「フロエン公女。」
「ベロニカ嬢?」
「試飲会の間ずっと私を睨んでいたのに、 今はどうしてため息をついていたんですか?」
「あ、それは…。」
(私も知らずに感情を表してしまったみたいね。)
「ミハイルに腹が立っているからです。」
「……それはどういう意味ですか?」
「私もよく利用されました。 以前はミハイルの優しさが真心だと信じていたからです。」
「利用···?!今、私が利用されているということですか?」
ベロニカはジュベリアンへの怒りでぶるぶると震えている。
(そうだよね、認めたくないわよね。 理解するわ、私もそうだったから。余計なお世話であることは分かっているけど、私と重なって見えてかわいそうだわ。)
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。 傷つけるつもりはなかったのです。」
怒りで震えていたベロニカは、顔を上げると目にいっぱいの涙を溜めてジュベリアンを睨みつけた。
「ティーパーティーは約束通り開くつもりですが、不便なら参加しなくても大丈夫です。 私はこの辺で失礼します。」
ジュベリアンは涙を浮かべるベロニカに背を向けてその場を去った。
ーーー・・・
マクスとミハイルが対峙している。
ミハイルは怒りで歪む顔で無理やり笑い言った。
「意図的に俺を呼び出して、無事だと思うな。貴様が自ら招いたことだ! 二度とよじ登れないようにしてやる!!」
そう言うとミハイルはマクスに勢いよく斬りかかった。
しかしマクスは振り下ろされた剣をするりとかわし、剣も手も使わずに膝でミハイルのお腹に思い切り蹴りを入れた。
ミハイルは呻き声をあげて、痛みに耐えきれずお腹を抑えてしゃがみ込んだ。
(はあ、はあ……はっ…。 何で…力があんなに強いんだよ。 うっ…。)
「やはりつまらないものは這うのがよく似合うな。」
「貴様の正体は何だ。なんでジュベリアンの隣にいるんだ?」
「お前なんぞが知る必要はない。」
マクスはミハイルを見下ろしながら言った。
ミハイルはその態度に激昂し、立ち上がり剣をマクスの首に突きつけた。
「言え!!!!さっきは油断したけどでたらめを言うと首を切るぞ!!」
「ジュベリアンが言ってなかったか? 愛しい『恋人』と。」
「戯言を!!彼女がお前のような平民を愛するはずがない!!一体何の目的で!!」
ミハイルが剣を振り上げた、その時。
「ミハイル・アルバト・ヘセン! 今すぐその剣を捨ててください!!」
突然響いたジュベリアンの声にミハイルはぎくりとし、力なくジュベリアンを見た。
マクスはもっと痛めつけたかったのにと不満げだ。
「ミハイル、私の話のようですが。まず、すぐにその剣を捨てなさい。」
「ジュベリアン…。」
「ジュベリアンではなく、 『フロエン公女』です。軽率な発言はご遠慮ください。」
冷たい顔で言うジュベリアンを見て、ミハイルはかつて、『ジュベリアンと呼んでください。 ミハイル!』と笑顔で話しかけてきたジュベリアンを思い出していた。
「こいつのせいで俺と線を引くなんて···。ジュベリアン、君は一体···。」
「なぜ私の恋人に剣を突きつけていたのですか?」
「おい、何か誤解してるようだがジュベリアン、俺は···!」
親しげな呼び名にいらついたマクスが話に入る。
「ジュベリアンではなく、公女と呼べ!」
(こいつ生意気に…!)
マクスの挑発にミハイルがまた剣を抜きかけると。
「皇居の騎士がこうして簡単に剣を抜くとは…。 私の父が知ったらがっかりすると思います。」
「ジュベリアン…これは…。」
ミハイルが言い訳を言おうとしたが、それを無視しジュベリアンはミハイルの前を通り過ぎ、マクスに近寄った。
「マクス!マクス、大丈夫ですか。おとなしく待っていろと言ったじゃないですか。」
「あそこは狭くて息苦しい。」
「確かに···かなり息苦しかったでしょうね。 ごめんなさい。」
マクスしか見ていないかのようなジュベリアンの態度に、ミハイルは我慢できずジュベリアンの手首を掴みあげた。
「俺と少し話そう!」
「殺されたくなければその手を、今すぐ放せ!」
マクスはすかさず怒鳴ったが、ジュベリアンが手で制す。
「ちょっと待って、マクスは手を出さないでください。」
(どうして…?お前に傷つけたやつをほっとけって…?)
「嫌だ。」
「マクス!どうか興奮を抑えて。少し話をするだけです。 待てますよね?」
「………分かった。」
(やはり貴様一人が恋人だと錯覚していたようだな。 ジュベリアンは最初から私の女性だったんだよ。)
ミハイルは勝ち誇ったような顔をして言った。
「ジュベリアン、静かな所へ行こう。」
しかしジュベリアンはその場から動かずに、ミハイルを睨みつけ言った。
「ミハイル・アルバト・ヘセン。今すぐこの手を離しなさい!」
「え?」
「離しなさいと言ったのよ!」
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