引用:
暴君を手懐けて逃げてしまった
あらすじ
皇帝によって、生きた魔剣に姿を変えられてしまったシャーリーズ・ローナン。 地獄のような日々を生き、400年間の祈りの末、剣となる前の過去へ戻ることができた。 復讐のため、帝国を滅ぼすことを決意したシャーリーズ。 帝国を支配する未来の権力者となるディラン皇子を手懐け、暴君に育てようとするが…
本文
「その名前は私だけが呼ぶことができる。質問は私だけがする。アルペリオは命が惜しくないようだな。」
ディランの冷たい声に後ずさる。
「わ、私は・・・。」
「師匠に話しかけて、何をしていた?」
「いえ、そんな、私は昔シャーリーズと・・・いや、会ったときに花束を、その・・・だから、この3年間なにもありませんでした・・・。ただ憧れていて・・・。」
「・・・。では、師匠をなぜアルペリオに迎え入れたのか?」
ディランのその質問に言葉がぐっと詰まった。
(過去ではただエヒリトについて研究する団体だったが、現在のアルペリオはキーラプロジェクトの失敗者が入る集団だ。私たちが近づいた事実を、単にシャーリーを助けたことではなく、アルペリオとキーラプロジェクトの関係まで把握している。皇帝はいったいどこまで知っているんだ・・・?)
「強かったから・・・!シャーリーズと同じくらい強い人はいないし・・・目的がある程度一致したから。よくわからないが、復讐をしたいのは同じだったから、その目的を達成するために助けてもらったんだ。」
「ほう、私の親愛なる師匠が、キーラプロジェクトの実験体だったんじゃないか?」
(・・・これは・・・なんて言えばいいんだ・・・。)
―――・・・
シャーリーは幼少期に邸宅の外に出た記憶がありません。
だから、皇帝の言う通り、今のシャーリーほどのオーラの境地に行くには赤ちゃんの頃からオーラを扱えたことになる。
だが、そんな記憶も可能性もない。
―――・・・
「シャーリーズ・ローナンは15歳で宮入したが、その前に実験されていた場合、生きていることはできません。団長の存在そのものが実験体ではなかった事実を証明しています。他に理由がないでしょう?」
「ほう、結局言うつもりはないようだな。」
ディランはそう言うと数枚の書類を机の上に投げた。
「これはなんだ・・・はっ・・・!」
その書類には「キーラプロジェクト」の文字が。
その下には実験体になった者たちの一覧簿があった。
その中の一つにリディアという名前があった。
「お前の妹。キーラプロジェクトの実験体だったようだな。結局のところ実験に耐え切れず、ひどい状態で亡くなったと聞いたが。」
書類には赤い字で、失敗の文字があった。
ディランは優しくささやいた。
「その遺体。そして加害当事者。両方私が所有しているが、どうする?お前が知っている情報を全て言うか。」
真っ青になりながらうつむいた。
(シャーリーが言っていた皇帝の姿と全く違う・・・。魔剣キーラが本当に存在するとしたら、皇帝こそキーラだ・・・。)
―――・・・
シャーリーは自室でメイドに髪を梳かれながら話を黙って聞いていた。
「帝国の仕事はとても大変です。それでも皆心から、最高の聖君だと陛下を称賛するのです。その間、どんな女性にも目をやることはありませんでした。まるで唯一のものはあるというかのように・・・。もともとこんな方でしたか?それでは帝師様、失礼します。」
髪を梳き終わり、メイドはにっこり笑って言うと、シャーリーズの部屋から出て行った。
シャーリーズは窓を開けて空を見上げた。
窓の外から聞こえたピアノの旋律に合わせて、思い浮かんだ男の歌を歌った。
(歳月が過ぎるとすべて、永遠とは幻想だと、空の銀のように・・・。)
「どうして空を見ているんですか?師匠。」
いつの間にか部屋に入ってきたディランに、シャーリーは後ろから抱きしめられた。
「あの日を思い出されていたのではないですか?師匠」
「・・・陛下。」
シャーリーを熱い目で見つめるディラン。
(師匠のほかに女性に触れたことはない。私はずっと・・・待っていたんだ。)
「今夜だけは私の側にいてください。」
そう言ってお互いを見つめあうと、ディランとシャーリーはどちらともなくキスをした。
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