引用:
緑陰の冠
あらすじ
交通事故で自分が書いた小説の登場人物「ラン」に憑依してしまった! しかもランは男主人公の「ユスタフ」にトラウマを与えた継母の娘だった。 ユスタフが成人するまでに当主として帝国の3大公爵家「ラチア家」の当主になるも、その道程にはさまざまな困難が待ち受けていて… 大丈夫よユスタフ、必ずあなたを幸せにしてみせるから!
本文
冬狩りの出発日が近づいてきた。 私が説得した末、ルミエも参加することになった。
この機会に青炎騎士団に所属感を感じることができればと思っているからだ。
そしてユスタフには···
「ユス。ドワーフたちにプレゼントされた灯りよ。 高いものだから、必ず戻ってきて返してね?」
「分かりました。行って参ります。」
そうしてランに見送られ、青炎騎士団は冬狩りへ向かった。
ーーー・・・
騎士団が去った後、妙に閑散とした邸宅は、まもなく開かれる新年会の知らせで再び浮き上がり始めた。
公爵家の新年会はもともと重要なイベントではあったが、特に今回はユスタフが当主となる年である。
(しっかり準備しなくちゃ!)
ランは昼間は仕事に忙殺され、夜は倒れるように眠りについた。
自分がこの盛大な行事の主人公だということを感じられるように。当然お祝いしてもらわなければいけないことだと分かるように。
(長い間記憶に残り、一生忘れない…きっとそんな、新年会になるように…。)
ーーー・・・
「今日来るんだよね?」
「はい、先ほど知らせを受けました。 当主様、やはり馬車の中でお待ちになるのが…。」
「いや、大丈夫。 シアこそ中に入ってて。」
「そんなわけにはいきません。」
「あっ!ユスー!」
帰ってきた青炎騎士団の先頭に立つユスタフをランは笑顔で迎えた。
「姉上。」
「おかえり!」
ーーー・・・
いよいよ新年会当日。
「招待に感謝します、当主様。」
「いらっしゃいませ、伯爵。 楽しい新年をお過ごしください。」
家臣と客が相次いで到着する。これまでの努力が実ったように、皆が口をそろえて新年会を褒め称えた。
ラチアの舞踏会は12月31日から1月1日へ変わる日を記念して、一晩中開かれる。
(そして、新年になる瞬間を記念するために私は…。)
日付が変わり、0:00の鐘が鳴った。
ランは準備していたようにユスタフと向き合った。
「青炎が轟きますように。青炎の加護をあなたに。栄光の一年になりますように。」
ランがそう言った瞬間、周りは湧き上がる。
「「「ユスタフ当主様万歳!!!」」」
「おめでとうございます、ユスタフ当主様!」
「楽しい新年になりますように、ラン様!」
『青炎が轟きますように』
これはラチアの当主へのあいさつに使われる言葉だ。
祝福の声の中、ユスタフはランに手を差し出し、微笑みかけ言った。
「新年の最初の踊りは、私に任せてくださいますか?」
「はい、喜んで!」
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