引用:
お父さん、私この結婚イヤです!
あらすじ
皆に嫌われる悪女「ジュベリアン」。 愛した恋人からも、たった一人の家族であるお父さんにも捨てられ、寂しく死んでしまった悪役…。 そんなジュベリアンに生まれ変わったって? こうなった以上仕方ない。 お父さんのお金を思う存分使って、派手なお嬢さんライフを送ろうとしていたのに、 サイコパスな皇太子が私の結婚相手だなんて! それなら方法はたった一つ、契約恋愛だけ。 その相手はお父さんの教え子がいいだろうと結論を出した。 その男が皇太子であることも知らずに…。
本文
ジュベリアンが前に出ると、威勢の良かった貴族の男が狼狽えた。
「あ、あなたは…まさか…フ、フロエン…公女!?」
「フロエン公爵家を代表して挨拶します。ジュベリアン・エルロイ・フロエンです。」
「偉大なフロエン公爵家の公女にお目にかかります。 わ、私は····。」
「知っています。ゴードン男爵。」
(帝国の英雄の娘が私を知っているって?へへ···うまく取り合えば得になるかも···。)
ゴードン男爵は先ほどの態度とは打って変わって、舌なめずりをして得意げにジュベリアンに言った。
「本当に光栄です、公女様! このようにお目にかかれるなんて、私は幸運のようです!」
「そうでしょうか?私は今、すごく不快なんですけれど。」
「え?もしかして、私が公女様に無礼なことでもしたのでしょうか?」
(自分より身分の低い人には横暴なのに、私の前では礼を尽くす?はあ、それ相応に応酬してさしあげましょう。)
「帝国の英雄レジス・アドレイ・フロエン、私の父の名をかけて命じます!私の人を脅すのはお止めください!」
(私の…人???)
後ろで成り行きを黙って見ていたマクスがジュベリアンの言葉に顔を赤くしていると、ジュベリアンはマクスの方に振り返り、小声で喋りかけてきた。
「私の人だという言葉に驚かないでください。 あなたを助けようとしてるんだから。分かりました?」
「あ、俺が間違えたよ…。」
そしてゴードン男爵に向き直りため息を吐き、言った。
「あなたは今!お父さんが付けてくれた私の護衛騎士に触れたのです!」
(((ジュベリアン…お嬢様????)))
後ろに控えていた本当のジュベリアンの騎士達はぽかんとしている。
ジュベリアンは続けて言った。
「フロエン公爵家の護衛に触れても、無事に乗り切るつもりではないでしょう? ゴードン男爵。」
(ほおおおおう???私の愛だと聞いて期待したのに···いや、人も多いし。ちぇっ、最近どうしたんだ。)
マクスはジュベリアンの言葉が本当ではなかったので少しふくれている。
ゴードン男爵は顔を青くし必死に弁明した。
「ふ···触れるなんて!! あの者は貴族である私を転ばせて私に口答えをしました!」
実は、先に喧嘩を売ったのはゴードン男爵だった。 自分より目立つマクスが目障りで、身分を利用してマクスを苦しめようとしたところだった。 もちろんその挑発に応じてマクスが男爵に運悪く仕返しをしたのは事実だが···。
「公女様こそ私にどうやってこの被害を賠償するつもりですか。 あいつは明らかに無礼者です!」
(あきれた。それでお金でもせしめようとするのか。言葉が通じない相手だから、 このまま素直に退かないと思うが···。)
「男爵様。今回一度だけ理解してくださいませんか。私の護衛が山里出身なので世の中の事情に疎いです。もちろん、礼儀教育ができなかった私の過ちでもあるので、主人として責任を負います。」
「さすが公女様! 本当に正直な方ですね! それでいくらを···?」
(…私の剣が処せと首を長くして待っているな。 切ってしまえと呼んでいる…。)
「私の護衛騎士にそうだったように、私も男爵を粗末に扱いましょう。」
「!?」
「!!」
思ってもみなかった発言にマクスもゴードン男爵も驚く。
「早くお辞儀をしなさい!」
「わ、私が公女様に粗末になんて…。」
(無邪気に見えたがなかなかだ。 一方的にやられはしないんだな。)
マクスは今まで見たことがなかったジュベリアンの一面に感心していた。
一方ゴードン男爵はへこへこしながらも怒りで震えていた。
(くそったれ女、フロエン公女···俺が口答えできないと思って···。 ちくしょう···。)
「こちらこそお騒がせいたしました···お手柔らかな···心でお許しください。 」
「男爵様が許しを請う人は私ではなく、私の護衛のようですが。」
ゴードン男爵は咄嗟に怒鳴ろうとしたが、拳をぐっと握り歪んだ笑顔を貼り付けてマクスに言った。
「はは···すまないね。 私が君を誤解したようだな。」
(くそっ!私が平民に頭を下げるとは。 いくら公女が後ろにいるからといってあんなに生意気な態度をとるとは、よくもお前なんかが!!!)
ゴードン男爵は今にも殴りかかりそうな態度でジュベリアンを睨んだが、その後ろにいるマクスの鋭い目つきに縮こまった。
(ゴードン男爵だっけ? 彼女のおかげで命が減らなかったことを光栄に思うべきだ。)
(ひいい···目つき···。目つきが···。)
「そ、それでは…私はこれで!」
ゴードン男爵は小さくなり急いでその場を立ち去った。
それを見届けたジュベリアンがマクスに心配そうに駆け寄った。
「大丈夫ですか?びっくりしたでしょう? 大変なことになるところでした。」
(あんなやつに私がやられると思ったのか。でも···手伝ってくれたから感謝はするべきだな···。)
『タメ口から直します。 特に人前で、あなたが私を尊重してくれたら他の人達も私を尊重するでしょう。』
マクスは以前ジュベリアンが言っていた言葉を思い返し、何を言うか考えた。
「………………。」
「?」
(なんで急に口数が少なくなったんだろう? 何考えてるの?)
するとマクスはジュベリアンの手を取り。
「助けてくださってありがとうございます、お嬢様。」
(な、なに!?急にどうしたんだ?!まさか前に、人前で尊重してくれって言ったのを、このタイミングで??)
「ごたごたしていたのですが、公女様のおかげで解決できてよかったです。そして、あなたに申し上げたいことがあったんです。」
「なんでしょう…?」
マクスはジュベリアンの手を引き寄せ、にこりと笑って言った。
「しましょう。契約恋愛を。」
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