アラサーOL、マンガを翻訳する

悪役の救い手(韓国漫画)にどハマりした、アラサーOLによるネタバレ・翻訳ブログです。

【ネタバレ・翻訳】 「暴君を手懐けて逃げてしまった」 72話

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引用:

暴君を手懐けて逃げてしまった

あらすじ

皇帝によって、生きた魔剣に姿を変えられてしまったシャーリーズ・ローナン。 地獄のような日々を生き、400年間の祈りの末、剣となる前の過去へ戻ることができた。 復讐のため、帝国を滅ぼすことを決意したシャーリーズ。 帝国を支配する未来の権力者となるディラン皇子を手懐け、暴君に育てようとするが…

本文

(ディランの裏切りはしょうがない。完全な信頼が壊れた時の感じを私もよく知っているから…。)

「これは…。」

シャーリーズは机の上に置いてあった青いピアスや以前使っていた万年筆を手に取った。

(この部屋の中は全て私が大事にしていた物だけで埋まっている…こんな些細なものまで。)

シャーリーズはたくさんの贈り物を見てディランの顔を思い浮かべる。

(私が好きそうなものを厳選して待っていたのだろう。1年…2年…3年もの間…。息が詰まりそうな所有欲と、ひどい愛憎が一緒に読み取れる。)

(愛…それがそんなにすごい感情なのか…。儚くて破壊的なこの感情を掘り下げると、理性がぼやけて結局は自らを飲み込んでしまう。それでもディランは止まらない…。)

シャーリーズは自室に立ち尽くし、壁にかけてある自身の絵を見つめた。

(とにかく、私に皇后宮を割り当てた意図とは違う。私はいつまでもディランの側にいることはできない。ディランにだけは怪我をさせたくないから。)

(今は粉々に砕け散ったその信頼を思うと、心が重い…。)

シャーリーズはぐっと拳を握りしめた。

(それでも、これだけはどうしようもないの。)



ーーー・・・


いつかの社交界にて。

『ガット伯爵家のレディーの婚約が白紙になったそうですね。』
『デルモン公爵家に嫁ぐことになったと威張っていましたが、今頃悔しくて目が血走っていることでしょうね。』
『今帝国民が最も関心があることは断然、皇帝陛下とデルモン小公爵ではないでしょうか?』
『もちろん!だから今首都の貴族達が皆社交界に注目しているのも当然のことです!』


カフー社交界で話題に上がっていることを思い出していた。

「ご主人様、まだ忘れられないのですか?」

その執事の言葉で先日、母である公爵夫人にひどく詰め寄られたことを思い返す。


ーーー・・・

『一体どうしたっていうの!?あなたは次期公爵なのよ!貴族の結婚を、私的な感情で台無しにすることではないということはよく知っているでしょう!?』
『…。』

ーーー・・・


そしてカフーはシャーリーズとの最後の会話を思い返す。


『小公爵、回帰について本当に覚えていることはありませんか?…そうですか、分かりました。ありがとうございます、小公爵。』


(それが最後の会話だと分かっていたら、捕まえておくべきだった。私はこんなに感情に振り回される人間だったのか?一緒に任務をこなしたからか…回帰前は婚約者だったからか…。そこまで自分にとって大きな意味だったのか。ただ他の人を心に抱いておいて結婚することは、相手に対する礼儀ではないということもあるが…。)

(シャーリーズが去った後、帝国は憂慮していた通りに流れ出した。忠誠心と愛国心で、帝国民は我先にと兵士に志願し、内戦と戦争によって、大陸はまさに激動の時代を過ぎた。)

(みんなに自由意志なんてない。数百年先にどんな利があるんだ。その上非常にギリギリだが、このような状況にも彼は最後の理性を保っている姿がさらに恐ろしくなってくる。)


先日のディランのと会話を思い出し、カフーは身震いする。


ーーー・・・

『小公爵。もし飼っている鳥が自由を求めて飛んでいったとしたら、これは飛んでいった鳥の羽を折っておかなかった者の過ちか、それとも鳥かごを作った人の過ちか。』
『誰の過ちでもないと思います。』
『…。いや違う。鳥が喜んで首を差し出すほど重要な価値を用意してあげられなかった者の過ちだ。』

ディランは無表情でタバコを吸っている。

『小公爵、キーラプロジェクトについて知っていますか?』
『…、詳しくは分かりません。』
『そうか。』

ーーー・・・


(しかし彼に残った最後の理性をシャーリーズが断ち切ってしまったら…。)

カフーにはどうすることもできないことだった。



ーーー・・・



「シャーリーズは…シャーリーズは無事なのか…!?」

ディランは冷たく微笑む。

「その名前は私だけが呼ぶことができる。その勇気を称えよう。」



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