引用:
悪女は2度生きる
あらすじ
謀略の天才、皇帝を作り上げる! ”お兄様が成功すれば、お前も成功するのよ” それを信じ、あらゆる悪事を企てた悪女「アルティゼア」。 しかし、彼女の兄への忠誠は裏切りとして返ってくる。 死を前にした彼女に手を差し伸べたのは宿敵であり、正義ある大公「セドリック」だけだった。 魔術で命と引き換えに18歳の自分に生まれ変わった彼女は、「セドリック」を皇帝にするために新たな人生を捧げることにするがーー
本文
カラムとの戦いで戦死した者達の葬儀を執り行っている。
これまで参列してきた葬儀は何の意味もない人々の葬儀だった。年老いた貴族の死、幼き後継者の死···。 それは懲罰の一部だった。誰かの死でしばしば権力関係が変わり、社交界の流行が変わった。時には帝国の経済が覆された。
しかしこの葬式は違う、本城全体に敷かれた暗い空気が不安と同じくらい、哀悼の情が交じり合っていた。ここで人々が慣れているのは感情ではなく手続きの方だろう。
「遺体を直接見ることができますか。」
「見るべきかしら?」
「戦死者の額に主君が勲章を送るのが、ここの風習です。今は大公殿下がいらっしゃらないので、妃殿下がしなければなりません。 自信がなければ、私が代わります。」
「いえ、私がやります。」
ティアは棺桶の中に眠っている故人の額に、緑色の宝石が付いた勲章をそっと置いた。
「よくやってくださいました。」
棺桶を移動させ、故人を偲ぶ親族たちは涙を流す。
その様子を見送り、リシアが言った。
「妃殿下。お住まいにお戻りください。 妃殿下はもっと休まなければなりません。」
「オーブリーは?」
「オーブリーは···寺院にいます。」
アリスが声をかけてきた。
「行かれるおつもりですか、 奥様。奥様のせいではありません! 大公殿下が処罰されたのです。 オーブリーさんは、 死んで当然の罪を犯したんです。」
「それは私も知っているわ。」
しかし、今日は違う。今日死んだ者たちは私一人のために死んだのだ。 2年間の契約結婚の大公妃のために。 そんな価値もない、そして、今やそのすべてのことに責任が生じた。 セドリックの「妻」であったために。
オーブリーの死についてもそうだった。彼女は死ぬ必要はなかった。エブロン大公家が分裂することは思いもよらなかった変化だった。
(でも「今日」だけは…。)
ティアは感情的になることにした。
ティアはアルフォンス卿と共にオーブリーが眠る寺院へ向かった。
そこには先客がいた。オーブリーの姉である。
「メル・ジョルディン卿」
「!あ、妃殿下…。」
(メルは指揮下に百の騎士を従えた騎士隊長だった···。 今回のことで職責を失い平民に格下げされるまでは、将来アーロンの後を継いで、ジョルディン伯爵として大公領の要人になったはずだ。)
「顔を上げて。マーガレットやアーロンがいるかと思ったけれど。」
「お父さんは巡察隊に出かけました。 母は病気です。」
「アーロン卿の年齢でパトロール隊は大変ではないか…。」
「志願しました。子どもの間違った罪を少しでも償いたいと···。」
「そう…。」
(ヤドリギの花…。)
「ごめんなさい。」
ティアは白百合をオーブリーの棺桶の上に置き、小さくそう言った。
「オーブリーはジョルディン家の恥です。 」
「!」
「両親と私が···間違って育てました。言い訳にしか聞こえないでしょうが、オーブリーは先代の大公殿下が粛清されたことを伝え聞いた日に、早産で生まれた子です。生まれた日に、頭まで布団をかぶせるか迷ったそうです。。
もし皇室と戦争でもすることになったら、ジョルディン家に赤ん坊がいることが負担になると思ったと聞きました。
それなら何も分からない時にそのまま死んだ方が良いんじゃないかと。
その時の負い目で、オーブリーには甘くなってしまったのです。 まるで首都の貴族たちがそうしているように何もさせず、綺麗な服を着せて、やりたい事だけさせて···。
でもある日、オーブリーが単なる分別がないわけではなく、自分を大公家のお嬢さんだと思っていることがわかりました。これではいけないと悟りましたが、もう手遅れでした。」
「···親がどう育てようと、人は自分の本質通りに生きていくものだ。」
「はい···どう教えても変わらない人もいますね。しかし···変わることができる子だったかもしれないから…。」
そう言うとメル卿は耐えきれず、大粒の涙を流した。
「卿はいいお姉さんだった。 それだけは疑わなくていいわ。」
ティアは目を伏せながら言った。
すると司祭がその部屋に入ってきた。
「侍女とお別れの挨拶は終わりましたか。」
「司祭様…?」
「こちらへどうぞ。 少しだけお話ししたいことがあります。」
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