アラサーOL、マンガを翻訳する

悪役の救い手(韓国漫画)にどハマりした、アラサーOLによるネタバレ・翻訳ブログです。

(ネタバレ・翻訳) 「悪役の救い手」 54話

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引用: 悪役の救い手

 

(本文)

 

 

ジェイ「あれは・・・。」

 

馬車の中からこちらを覗いている小さな女の子を見て、ジェイはびっくりした。小さい頃のジェイにそっくりだったのだ。

 

若い頃の公爵(父)『ジェイ。頭を出していたら危ないよ。外に何か面白いものでもあるのかい?』

 

声をかけてもじーっと外を眺めているジェイに、不思議そうにする公爵。

 

若い頃の公爵(父)『しばらく止まってくれ。』

 

ジェイ「あっ・・・・!」

 

黙ってその様子を見ていたジェイは、突然痛みに襲われ、胸をぎゅっと押さえた。

 

 

小さい頃のジェイ『きれいだね。』

 

若い頃の公爵(父)『何を見ているの?一体何がきれいなんだい?』

 

小さい頃のジェイ『あの子です。とてもきれい。』

 

馬車の中から、自分の方を指差す様子を見て、ジェイは恐る恐る後ろを振り返った。

 

なんと、そこには母に手を引かれながら歩いている、幼い頃のアゼフがいたのだ。

 

 

小さい頃のアゼフ『本当にだめ?お母さん、どうしても欲しいんです。』

 

アゼフの母『だめよ・・・アゼフ。』

 

悲しそうな顔をするアゼフの手を引いて、二人はその場を去ってしまった。

 

小さい頃のジェイ『綿布団が欲しいそうです。』

 

若い頃の公爵(父)『誰が言ったんだい?』

 

小さい頃のジェイ『あの子です。あの子が布団を欲しがっていました。お父さん、私のものをあげてはだめですか?あの子にあげたいです。』

 

きらきらした顔で公爵にお願いするが、公爵は訳が分からないという顔で首をかしげた。

 

その時、もう一度アゼフがいた方に目を向けた小さい頃のジェイと、一連の様子を呆然と眺めていたジェイの目が合ってしまった。お互い何も言わずに見つめあう。

 

ジェイ「違う・・・これは私の・・・いや、一体誰の記憶なんだろう?」

 

先ほど痛くなった胸を、ぎゅっと押さえた。

その時、地面にひびが入り、ジェイは真っ暗闇に真っ逆さまに落ちていった。

 

 

記憶が入り乱れ、思い出だと信じたものが、落ち葉のように散っていった。

 

(私の名前・・・家族、愛する人たち・・・何も覚えていない。)

(私は・・・誰?)

 

―――・・・

 

そこでハッと目を覚ましたジェイ。

 

ジェイ「夢・・・?」

 

突然、夢の中で感じたような胸の痛みを感じたジェイは、隣で寝ているエリサの腕を必死でつかんだ。

 

エリサ「うん・・・お姉ちゃん、どうしたの?どれだけ寝てたんだろう。うっかり寝ちゃったみたい・・・お姉ちゃん!?どうしたの?どこか痛いの?」

 

ジェイ「エ・・・リサ。」

 

様子がおかしいジェイに気付いたエリサは、必死に呼びかける。

 

エリサ「お姉ちゃん!しっかりして、お姉ちゃん!」

 

エリサを掴んでいた腕がベッドの上に落ち、ジェイはぐったりと意識を失ってしまった。

 

エリサ「えっと、どうしよう!お医者様を呼んでくるよ。少しだけ・・・少しだけ我慢して!わかった?」

 

走ってお医者様を呼びに行くエリサ。

 

 

苦しむジェイの周りを、緑色の光が輝き出した。いつの間にか真っ白な世界に包み込まれ、そこを歩き出したジェイ。

 

(慣れ親しんだ記憶の流れが、私に流れ始めた。それは、壮絶だった運命の始まり。)

 

(ねじれた時間の顛末だった。)

 

→次回「悪役の救い手」55話へ