アラサーOL、マンガを翻訳する

悪役の救い手(韓国漫画)にどハマりした、アラサーOLによるネタバレ・翻訳ブログです。

【ネタバレ・翻訳】 「緑陰の冠」 80話

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引用:

緑陰の冠

あらすじ

交通事故で自分が書いた小説の登場人物「ラン」に憑依してしまった! しかもランは男主人公の「ユスタフ」にトラウマを与えた継母の娘だった。 ユスタフが成人するまでに当主として帝国の3大公爵家「ラチア家」の当主になるも、その道程にはさまざまな困難が待ち受けていて… 大丈夫よユスタフ、必ずあなたを幸せにしてみせるから!

本文

「本を読むことができるようになったの?」
「はい、子供のレベルの本ですが。」
「それでもすごいわ!そういえばルミエ、準備はできてる?」
「はい?ご主人様を置いてどこへ行けばいいのですか?」
「冬狩りよ。」
「冬狩り・・・ですか?」
「ユスがね?冬になってお腹の空いた魔獣達が降りてこないように、あらかじめ倒しておくんだって。」
「そうなんですね。しかし、私が行くのなら誰がご主人様を守るのですか?」

ルミエはにっこり笑って、しかしはっきりと言った。

「行きません。」

その答えにランは慌てる。

「そ、それはだめだよ!ルミエも青炎騎士団の一員なんだから!団長の言葉は聞かなくちゃ!」
「私の所有者は誰ですか?」
「まあ、それは・・・でも、一日も早く騎士団に慣れないと!私がいなくなっても、ルミエはここに残るんだから。」
「・・・なぜそうしなければいけないんですか?」

(え・・・?)

ランはきょとんとする。

「なぜご主人様はここを去るのですか?ここへ来て私も話は聞きました。めちゃくちゃだったラチアを立て直したのはご主人様です。ラチアの血が混ざってなくとも戸籍上は確かなラチアです。しかしなぜ、これをすべてユスタフ様に与えて、ご主人様は去ろうとなさっているのですか?」

(え!だ、誰もいないよね・・・?いないからそんなことを言ったのよね?)

あまりにルミエが堂々と言うので、ランの方が心配になってあたふたする。
誰も周りにいないことを確認して、ランはルミエの隣に座ってひっそりと言った。

「ルミエ、大丈夫。ちゃんと後のことは考えてあるの。そもそも、最初からそうする予定だったのよ。」

ランの発言にびっくりした様子のルミエに笑いながら続けて言った。

「ラチア公爵の座に未練はないわ。なにより自分がしたいことをするのが一番よ。」
「・・・しかし、ずっと仕事だけするんですか?私と遊ぶ時間もないほどに?」
「え?私と遊びたいの?」
「私は毎日のようにそう言っていますが?」
「あぁ、それは冗談だと思って・・・。それじゃあ、今から遊びに行く?外でそりでも・・・」
「今日も仕事が忙しいでしょう?」

ルミエは拗ねたようにランにそっぽを向けた。
その様子にランはくすりと笑う。

(あれ?ルミエ・・・かわいいとこあるのね?大きな犬が散歩できないことに拗ねているような・・・。)

「ふはっ!」
「な、な・・・!」

耐えきれずに笑ってしまったランに、ルミエは恥ずかしそうにする。

「ごめんごめん、さ、出かけよう!日中は遊んで、夜に仕事するわ!今日はルミエの日ね!」



―――・・・



しっかりと着込んだ二人は、雪が降る中、そりを持って山に来た。

「よーし!楽しむぞー!ルミエ、実はここに来てそりは初めてなの!」
「そうでしたか。」

そう言いながら二人は山をそりで滑り降りる。

「うん、でもこれ思ったよりも難しいね!ルミエは上手!ね、ルミエってどこ出身なの?」
「ここよりも西の生まれです。」
「そうなんだ~、じゃあラチアの冬は寒く感じるでしょう?私の出身もここではないの。だからかな?」

そんな陽気なことを言いながら雪の山に突っ込み、雪まみれになって笑うラン。
そんなランに駆け寄るも、ランが笑うので、ルミエもつられて幸せそうに笑った・



―――・・・



邸宅にて。


「これは・・・完全に雪だるまになりましたね。」

出迎えてくれたユスタフは呆れたように言った。

「ユスー!そりすごいおもしろい!楽しすぎて木にぶつかっちゃったの。」
「大丈夫でしたか?」
「うん、けがはしてないよ!木に積もった雪が落ちてきて埋もれたけど・・・。」

そこまで言うと、ユスタフがランの頬を両手で包む。

「冷たいですね。お湯を沸かしたのでゆっくり休んでください。」
「そうね、頬の感覚がないもの。二人とも、おやすみなさい!次はユスも一緒に行こうね!」

ランはそう言い、その場を去った。


それを見てルミエも下がろうとしたが、ユスタフに呼び止められる。

「待て、話がある。」



―――・・・




「三日後からの冬狩りに参加してもらう。ブレインはお前が自身をコントロールできないことが心配なようだ。」
「・・・それは、どうすればいいでしょう?」
「最初は殺意もコントロールできない狂った犬を連れてきたと思ったが、だいぶ慣れてきたとは思う。」
「愛情より強い首輪はありませんから。ご主人様は、私に愛情を教えてくれました。」

ルミエがそう言うと、場の空気がサーっと変わった。

「ご存じでしょうか?奴隷がご主人様をどうやって見るか?」

ユスタフは静かに言う。

「一つアドバイスをやろう。ランは特別を作らない。だから勘違いしないほうがいい。」


(ランは不思議だ。人を扱う方法を心得ている。不思議な緑の瞳。対価を望まない愛情と優しさ。)

(しかし、対価を望まないからこそ、残忍な愛情と優しさ・・・。)


「冬狩りは抜けても構わない。勝手にしろ。もう行け。」


ユスタフはルミエが去ったあと、しばらくじっと考え込んでいた。



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