引用:
お父さん、私この結婚イヤです!
あらすじ
皆に嫌われる悪女「ジュベリアン」。 愛した恋人からも、たった一人の家族であるお父さんにも捨てられ、寂しく死んでしまった悪役…。 そんなジュベリアンに生まれ変わったって? こうなった以上仕方ない。 お父さんのお金を思う存分使って、派手なお嬢さんライフを送ろうとしていたのに、 サイコパスな皇太子が私の結婚相手だなんて! それなら方法はたった一つ、契約恋愛だけ。 その相手はお父さんの教え子がいいだろうと結論を出した。 その男が皇太子であることも知らずに…。
本文
(師匠はあの時きっと、付き合うことをを許していた。しかし…。10年以上前に知り合った師匠だが·········本当に心のうちがわからない方だ。)
「座りなさい。」
絶対零度の表情のレジスとマクスは睨み合っている。
ジュベリアンはその間でおろおろとしていた。
(元々このためにマクスを呼んだんじゃないのに···お父さんが家にいるとは。)
ジュベリアンはマクスの服をちょこんと掴み、小さい声で言った。
「ん?」
「緊張してるならまず私の横に座ってください。」
レジスはそんな二人の様子をじーっと見ていたが、使用人が入ってきたため食事を始めた。
「マクス。スープは一番外側にあるスプーンで飲むといいですよ。」
「?」
(食事マナーは5歳の時に全部習ったが。)
「その程度は俺が勝手に···。」
マクスはそう言いかけたが、ジュベリアンの私に任せてくれと言わんばかりの表情に苦笑いをして言葉を言い替えた。
「そう…分かったよ。」
「お客様、まもなくメインディッシュでステーキをお出ししますが、焼き加減はいかがいたしましょうか?」
「私のと同じ『ミディアムレア』でお願いします。」
「かしこまりました。」
「あ、マクス。サラダはこのフォークで食べたらいいです。空の皿は勝手に片付けてくれますよ。あ、ここにソースが付いてます。」
(だめだ!俺はミディアムレアはまっぴらごめんなのに!言わないといけないのに、タイミングが…。)
レジスはまたしても二人の様子を静かにじーっと見ていた。
(ジュベリアン…また騙されているんだな。男を簡単に信じてはいけない。)
「本日のメニューはマッシュルームを添えた子牛のステーキです。香りと肉汁をしっかり感じることができるでしょう。」
(ステーキか…飽きるほど食べたな···。)
「お肉が硬いので、私が切ってあげます。」
「!!!」
(終わる!終わりだ! いや、俺は子供じゃないのになんで何度も助けてくれるんだ?)
レジスは甲斐甲斐しく世話されているマクスを睨む。
「ジュベリアン。」
「あっ、はい、お父様。」
(マクス、生意気な奴だ。私の娘のきれいな手に包丁を握らせるなんて。)
レジスは無意識のうちにマクスにナイフを向けていた。
(今何を切るんだ? まさか、俺の首?!)
「ジュベリアン。マクスのお皿をくれ。」
「あ…はい、お願いします。」
(あ···そっか。 お父さん、マクスと親しくなって接客がしたいのね。)
(びっくりした…人の首にナイフを向けないでください!)
レジスはジュベリアンから皿を受け取ると、肉だけでなく皿まで切る勢いでナイフを入れ言った。
「上っ面と中身が全然違うな。」
(まるで、うちの娘を愛しているふりをする奴のようにな!)
(まるで、私たちの仲を認めるふりをするあなたのように!)
レジスとマクスは心の中でハモった。
そして睨み合いながらレジスが言った。
「常に注意したほうがいい。 表と裏があまりにも違うと、血を見るに決まってる。」
(誰の話だ!!!)
レジスとマクスが睨み合っている中、ジュベリアンは違う意味で顔が青くなっていた。
(ミディアムレアで頼んだけど、大丈夫かな。肉に血が多すぎるのかな? シェフがミスするはずがないのに。)
「お前の皿もよこしなさい。」
「!!」
(確かに自分のものもしてくれるのに、娘である私のものをしてくれないと変だよね。)
「ありがとうございます…。」
「後でお茶でもいっしょに飲もうじゃないか。」
(お父さんは本当にマクスを大事にしてるんだな···。)
(畜生、一体いつ二人になれるんだ。)
「!では、今日は私が淹れたお茶を一緒に飲みましょう。」
二人は顔をパァーっと明るくさせ期待した。
しかしそこで、使用人が部屋に入ってきた。
「御主人様、皇居から伝言が届きました。今すぐ入宮せよとのことです。」
「急用ですか、お茶はまた今度飲みましょう。 早く皇居へ···。」
「急ぎではない。」
「?けれども…。」
「私にはこれがもっとも重要だ!」
「俺も同感だ。」
(なんでマクスまで?????)
ーーー・・・
三人は向かい合ってお茶を飲んでいた。
(本当にこれでいいのかな。 皇室に睨まれたくないんだけど···。)
レジスがお茶を飲みながらかすかに微笑み言った。
「本当に立派だ。」
(え?立派だと、わたしに言ったの??)
「これは香りがいいな。」
(あ、ただお茶がいいみたいだね。 お茶嫌いのマクスが認めるくらいだから。まあ···とにかく収穫はあるかな···。 これで試飲会は心配なさそう。)
レジスはジュベリアンに言った。
「マクスに言いたいことがあるから、ジュベリアンは先に上がったらいい。」
(そうね、マクスとの時間を邪魔しないように退かないと。)
「それでは、ごゆっくりお過ごしください。」
ジュベリアンが一礼してその場を去ると、レジスはティーカップをソーサーに乱暴に置き、マクスに言った。
「一体どうしてうちの娘の周りをうろつくんだ!!何を企んでいるんだ? マクスミリアン!」
「企んでるだなんて、俺は…!!」
(···そういえば···俺はなぜ…。)
「どうしても、愛してるって嘘は吐けないようだな。ジュベリアンは傷の多い子だ。 あの子の恋人のふりをして近づくのはよせ。」
「俺は……」
(ジュベリアンを…。)
「愛………しているのかもしれません。」
(何…だと?)
顔を赤くして言うマクスに対し、レジスは顔を青くさせた。
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*1:ジュベリアンが直接淹れたお茶!?