引用:
悪女はマリオネット
あらすじ
エルダイム帝国の美しき皇女、カエナ・ヒル。 彼女は傲慢で贅沢を好む典型的な悪女だったが、弟のレイジェフが皇帝になる過程で彼に利用された挙げ句、悪女らしい最期を迎えた。 そんな小説の中の悪女・カエナの生まれ変わりだった私が、もう一度カエナとして生きる…!? 皇女カエナは今度こそレイジェフから逃れ、自由を手にすることができるのか? 自分らしい人生を生きたいと願う皇女の、壮大な物語が始まる…!
本文
「あの···皇女殿下···またキッドレー卿が手紙を送ってくれたようですが···。」
「これで一体何回目なの···。」
机にはラファエロからの手紙が山積みになっておりカエナは頭を抱え、ため息を吐いた。
そんなカエナにベラが言った。
「……。殿下、もしキッドレー卿が殿下に恋心を抱かれていたらどうしますか。」
「え?!それはあり得ない話よ、ベラ。」
「しかし前に立ち寄った後、ずっとこうやって手紙を送って···キッドレー卿がこうしていることを知れば社交界がひっくり返ると思いますよ?」
「私もどうしてああなのかさっぱり分からないわ···。」
(あの時突然飛び出して…。
キッドレー卿があんなに感情をあらわにするのは初めて見たわ。 本人もすまなく思ったのか、ずっと謝罪の手紙を送ってきてはいるけど…オリビアの話をそんなに嫌がるとは思わなかった。
私はただ二人がうまくいくと···二人は原作ではカップルだから。そうよね、私が割り込む隙は………って今何を考えたの!?)
カエナはそんな思いを振り切るように頬をバチンと叩いた。
「殿下!?」
「ははは、何でもない…。」
「殿下…。」
(ベラの一言でこんなにも気が緩むなんて···しっかりしろ、カエナ・ヒル。 あなたはまだしなければならないことがたくさんあるのよ。)
ーーー・・・
ベラはアニーと廊下を歩きながら先程のカエナの様子を思い出していた。
(殿下はそうではないふりをしているが、最近は元気がない。中央城の厨房に元気が出るような保養食を準備するよう言わなければならないわね。)
「あの、ベラ様。 中央城の厨房に私たちが直接行く必要があるんですか?」
「もちろんよ。 皇女殿下が召し上がる物を、 しっかり確認しないと。 私たちは皇女殿下を一番近くで補佐する侍女だからね。ナッツアレルギーで倒れたこともあるからもっと気をつけないと。 生臭い物も召し上がれないから、海産物を載せる時も特に気を使っているや。また食べ物に問題があったら私たち2人とも責任を問われるわよ、アニー。」
「は、はいっ!」
(そして、監視する人間もいる。
私が立ち寄る度に私を排除するのに忙しい中央城の総料理長。
皇女宮がつけ上がると言って、常に争いをする総括女中長であるヒリエ夫人。
特にシェフは神経質なほど外部の人の出入りを避ける。怪しい行動はしないだろうけど…。)
ベラが考えていると、今まさに思い浮かべていたヒリエ夫人が前方から歩いてきた。
「あら、今皇居内部を取り締まり中なのだけれど、あなた達はどこに行く途中なの?」
「中央城の厨房に行こうと。 皇女殿下が召し上がる食事の確認が必要ですので。」
「まあ!厨房に素人のあなた達が行って何をするの? キッチンは皇居のどこよりも厳しく管理されている神聖な場所よ!こんな風に厨房を二重三重に出入りして越権すると、厨房側からずっと抗議が入ってくるじゃないの!」
(はあ、もう!完全に難癖じゃん···!しかし、私は皇女宮の唯一の上級侍女だ。 このような気争いに押されて皇女殿下を辱めることはできない。)
ベラは気で負けないようヒリエ夫人を堂々と見返して言った。
「越権ですって?侍女として食事を確認するのは当然すべきことです!今まで侍女たちがすべきことをしなかっただけで、私の行動には問題ないということをご存知ではないですか?」
(訳もなく根掘り葉掘りしようとする女中長の態度も疑わしい。名簿が渡されたと殿下を牽制しているのか?みんなレイジェフ殿下側の人だから、予想はしていたけど、こんなに早いとは…。)
「皇女殿下はこの間のナッツアレルギーで大きな影響はありませんでした。しかし当分の間は私達が食べ物を確認しなければなりません。」
「···ということは、総料理長はそういうことを知らずに料理を準備するということ? ナッツ事件も侍女の手違いのクッキーだそうだけど···だとすると厨房じゃなくて皇女宮の侍女たちが問題なんじゃないの?
侍女もたった四人だけを選ぶというからどれだけすごい侍女かと思ったのに…皇女殿下はたいしたことない者しか選ばなかったようね。」
「……!!」
ベラは何も言い返すことができず、屈辱に顔を赤くし俯いた。
ーーー・・・
ベラは侍女の部屋に戻り、机を叩いた。
(殿下はどうやって毎回落ち着いておられるんだろう? 私はたったこんなものでも我慢できないほど腹が立って仕方ないのに···!私がもっとしっかりしていなければずっと軽んじるだろう。
皇城においての教訓『役に立たたければ生き残れない』
そうでなければ私は簡単に捨てられるだろうし、私の唯一の救い、皇女殿下の役に立たなければならない。
総料理長とヒリエ夫人が徹底して守っていた中央城厨房。 やはりそこに何かがある。 そこを探さなければならない。
でも···一人では出来ない。 私を助けてくれる人が必要よ。
賢く、気が利いて…有能で、落ち着いて…。)
「···あれ、誰かいるとは思わなかったです。どうしたんですか、ベラ?」
(そんな人が…。)
ベラはちょうど部屋に入ってきたオリビアを見て、にやりと笑った。
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