引用:
皇女、反逆者に刻印する
あらすじ
人造人間「ホムンクルス」の反乱によって滅びたハーデルラミド皇室。第7皇女イヴは妹の裏切りによって1度は命を落としたものの、錬金術の力で8年前の世界で再び目を覚ます。 イヴが皇室滅亡の未来を変えるための方法―それは皇室を滅亡に追い込んだホムンクルスの王・ミカエルを自らの専属騎士にすることだった。 皇女と反逆者、前世ではすれ違ってばかりだった2人が向かう未来とは——!
本文
その頃、定期ティータイムでは。
第1皇女、ロクサンドラ・ハーデルラミド
「イヴ。聞くところによると1ヶ月近く経つのに、専属騎士が夜の世話をしなかったんだって? 」
第2皇女、カローラ・ハーデルラミド
「まさか。そんなことあり得る?あんたが専属騎士をまともにしつけないなら私達が出ていくわよ?」
姉である皇女達に次々とミカエルのことについて聞かれていたイヴ。
(大まかに予想はしていたけれど、堂々と寝床の話をするとは。まあ、これがホムンクルスを合法的な寝室奴隷にする皇族たちの平均か…。皇帝になって、必ず専属騎士制度を廃止する。)
第4皇女ヘシア・ハーデルラミド
雰囲気がブリジッテによく似ている。
「もしかしてホムンクルスはそちらの方面に欠点があるの?」
「いいえ、ありません。」
第5皇女アイセル・ハーデルラミド
「ふうん、そう? 点検は終わってるみたいね。」
「ええ、まあ。」
(ありのまま言ったらまた大騒ぎになるだろうな。)
「ええ、嘘だね。気に入れば夜ごとに返すはずがないじゃない。そうだよね?ブリジッテお姉様?」
第4皇女に話を振られ、ブリジッテはイヴに言った。
「先に少し教育をさせてあげようか?」
イヴは黙ってブリジッテを睨みつける。
「そんな目しないで、イヴ。 ちょっとした冗談よ。」
イヴは周りを見回し、冷たく言った。
「………。お姉様方。愛情のこもった関心はありがたいですが、私の専属騎士は私が自分で判断します。それから、アグニト卿が騎士としての品位を損なう行動をしない限り、彼の教育問題が口に出ることは絶対ないはずです。 他人の口からならなおさらです。ご了承ください。」
「「「………。」」」
皇女達が静まり返った所で、ブリジッテが言った。
「考えてみたらこの話題は適当なテーマではなさそうね。」
「お姉様の話を聞いてみると、 そうですね。 他のテーマを探してみましょう。」
「では···魔晶石採掘量を増進させる方法について討論しましょう。」
(今度は魔晶石の話だって? 言った言葉を繰り返すのが時間の無駄だということを知らないはずがないのに? あえて陛下もいない場所で、なぜ···。)
イヴがブリジッテの腹を探っていると、角笛が鳴った。
(ヒューに任せた角笛の音!!まさかと思ったけど、本当にミカエルを狙ったのね! 頭が痛くなるわ…未来のホムンクルス王を…! よくしてくれても足りないのに···! このままだと、皇室だけでなく帝国の滅亡を早めてしまう…!)
イヴは頭を抱えた。
(早くミカエルのところに行かなければならないのに…お姉様…。なんとか時間稼ぎをしているのね。この罠を組んだのがお姉様であることは確かね。 さてと…そのまま寝かせてしまおう。幸いにも、一番上のお姉さんたちは共犯じゃないようだし。それでは主導者と共犯者だけ処理すれば良いだろう。)
「・・・・・だからホムンクルス千人の命位は…うう…?」
「お姉様?」
「あ、どこまで言ったっけ···?」
「どうしたんですか?どこか悪いんですか?」
ブリジッテはようやく自分の様子がおかしいことに気づき、イヴを睨んで勢いよく立ち上がった。
「お前…!!」
(もう遅いよ。)
イヴは魔法でブリジッテを眠らせた。机に突っ伏している状態のブリジッテを見てイヴが言った。
「あら、見てください。討論のテーマが退屈で眠ったようですね。残念ですが、今日の定期ティータイムはここで終えたほうが良さそうです。」
「そ、そうね。」
「ええ、そうしましょう。」
躊躇いがちに言う第1皇女達に、イヴはにっこり笑って言った。
「そして一番上のお姉様方、急用が思い浮かんだので先に退出してもいいですか?」
「勿論よ。もうお行きなさい。」
「ありがとうございます。」
「うん?イヴ、出入り口は反対側だけど···。」
第1皇女がそう言うと、イヴはバルコニーへ出て、手すりを飛び越え一階に降りた。
「イヴ!?!?」
第1皇女達の悲鳴を無視し、イヴはその場を離れた。
(忙しくて死にそうなのに、今ドアから出てる暇はないわ!待ってて、ミカエル!)
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