引用:
皇女、反逆者に刻印する
あらすじ
人造人間「ホムンクルス」の反乱によって滅びたハーデルラミド皇室。第7皇女イヴは妹の裏切りによって1度は命を落としたものの、錬金術の力で8年前の世界で再び目を覚ます。 イヴが皇室滅亡の未来を変えるための方法―それは皇室を滅亡に追い込んだホムンクルスの王・ミカエルを自らの専属騎士にすることだった。 皇女と反逆者、前世ではすれ違ってばかりだった2人が向かう未来とは——!
本文
「ちょっ…!!」
イヴは顔を赤くし、慌てて手を引っ込めた。
「ご迷惑でしたら、申し訳ございません。 殿下の手の甲に口付けする光栄に思わず…。」
「···お帰り下さい。」
「はい、殿下。」
ハルシュテンは最後まで満面の笑みを崩さず、部屋を出ていった。
ミカエルがハルシュテンが出ていったドアを睨みながら言った。
「手首をねじってしまえばよかったのに。」
「第3皇女の専属騎士にケガさせる訳にはいかないわ。」
「命令を受けたからしたことのようではなかったが。」
「そう?」
(お姉様が私を不快にさせたと思ったんだけど。 じゃあ、他の目的があるのかな?)
イヴはハルシュテンの事を振り返る。
(イライザ・ハルシュテン。 お姉様の男性遍歴を知っていながらも、その目に止まるために努力したと言うが…。 理由は分かりやすい。お姉様が有力な皇太子候補だからね。 そんなに現実主義的な者が···私に色目を使うなんて···。全く嬉しくない。間違って絡まれたら痴情より汚い姿を見られるかも···。)
「この前は手の甲を差し出していた皇女で、今度は手の甲をくれという専属騎士か。そういえば皇居では専属騎士を景品として出すこともあるそうだな。」
「あ···そうね。そういうのがあるわ。」
(ホムンクルスを物だけで見る皇族たちなんて···。)
「私はそんなこと申請するつもりないから心配しないで。」
「ふうん。君が申し込む方なのか?私は当然申請を受ける方だと思ったのに。」
「あ、そっか。ミカエルが私の専属騎士である以上、申請を受ける確率の方が高いのか…。」
ミカエルは冗談のつもりだったのだが、イヴは本気で悩んでいる。
「そうだな。心の準備をしておかないと。」
「応じるつもりはないけどね。」
「もし避けられない戦いだったらどうするんだ?」
ミカエルがそう言うと、イヴは勢いよく振り返り、後ろにいるミカエルを見つめた。
「勝たないと!ミカエルを奪われるわけにはいかないわ。 絶対に他の人にはあげないよ。」
(あ…俺は本当に···皇女に刻印されたようだ。)
ーーー・・・
イヴとミカエルは社会奉仕活動のため、平民のような装いで町に来ていた。
…だからレッドモンさんが楽な服を着ろって言っていたのか…。
『高い功績ですが、大変な活動なので楽な服を着て行ってください!』
「ところで、ミカエルがあんなに子供たちと仲良くなるとは思わなかった。ミカエル、子供が好きなんだね。」
「···院長の言う通り、天使みたいで。」
「おかげで無事に終えられたわ。」
「皇女の役に立ったとは嬉しい。」
「うーん、ミカエル、考えてみて?このまま帰るのは残念だと思わない?。」
「というと?」
「都市見物をしよう!ちょうどお祭りが行われているところらしいし。」
「……!皇女が望むなら。」
ミカエルは素っ気なく言ったが、明らかに嬉しそうだ。
「ミカエル、聞きたいことがあるんだけど。 」
「どうぞ。」
「街でもずっと私を皇女と呼ぶの?」
「あ。何て…呼べばいいんだ?」
「イヴ!…ね、呼んでみて?」
ミカエルは少し恥ずかしそうに呼んだ。
「イヴ。」
その時、過去で、反逆者として君臨していた時の、ミカエルに呼ばれた時の声が蘇った。
『イヴ。』
「イヴ…?」
「…あ、うん。よし、そう呼んでね。」
「分かった、イヴ。」
(びっくりした···。 一瞬、あの時のミカエルと重なった。)
ーーー・・・
イヴとミカエルは花屋で花の匂いを嗅いだり、露店で焼き鳥を買って食べたり、お祭りを満喫していた。
「さあ!劇団「ペガサス」のお芝居をご覧いただいた皆さん!もうすぐ、私たち劇団最高歌手の単独ステージが始まります! 多くの関心お願いします!最高の歌手ですよ〜!!」
「興味深いわね。行こう!」
イヴとミカエルが行こうとすると、すぐ近くから言い争うような声が聞こえた。
「嫌だって!あっちに行ってって!」
「君と話がしたくて…!!」
そして片方の女が走ってこっちに向かってきたが、前を見ていないようだ。
イヴとその女がぶつかりそうになる。
「?!」
「!!!」
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