引用:
皇女、反逆者に刻印する
あらすじ
人造人間「ホムンクルス」の反乱によって滅びたハーデルラミド皇室。第7皇女イヴは妹の裏切りによって1度は命を落としたものの、錬金術の力で8年前の世界で再び目を覚ます。 イヴが皇室滅亡の未来を変えるための方法―それは皇室を滅亡に追い込んだホムンクルスの王・ミカエルを自らの専属騎士にすることだった。 皇女と反逆者、前世ではすれ違ってばかりだった2人が向かう未来とは——!
本文
第3皇女が挑発するように言った。
「続けて言ってみなさい。」
挑発には乗らず、イヴは陛下の方を向き、喋りだした。
「……東が安全になったということで、南の方に責任を負ってほしいと言われていますが、彼らは素直に受け入れるわけにはいかないでしょう。いくら家と仕事が欲しいといっても、命より大切なものはありませんから。さらに、強制移住のために皇室の親衛隊を送るとしたら···。陛下の地位は、さらに地に落ちることでしょう。」
イヴは言い切ったが、過去ではイヴのこの発言により陛下は激怒した。
(···あの時とは違う、あの時とは違う。)
陛下は何も言わない。
すると第3皇女が言った。
「それで、どうしようというの?まさか開拓事業をしないことが最善だと言うつもりか。」
「いいえ。代案があります。」
ここで陛下が口を開いた。
「…いずれにせよベティの計画どおりなら、皇室で貧民たちが住む家を建ててあげようと思ったから。」
「またホムンクルスが亡くなれば、その家は再び皇室に帰属するでしょう。」
「素晴らしい、イヴ。」
「褒めすぎです。」
第3皇女が怖い顔でイヴに言う。
「意外ね、イヴ。かりそめにも騎士の私家なのにそんな所に建てようとは。」
「ホムンクルスの名誉よりも帝国の実利が重要ではないでしょうか。」
「···あなた、結構皇女らしくなったね。」
「恐れ入ります。お姉様。」
(お姉様が名誉意識を持っていてよかった。 名誉より重要なのは人間としての権利。)
「そうだ、もしかすると他のものはないのか。私は今度の事業について君の意見をたくさん聞くつもりだ。」
「もちろんです、陛下 。」
「お気をつけて。 陛下、お姉様たち。」
そうしてイヴの部屋のお披露目は無事に終了した。
ーーー・・・
イヴは気を緩めてソファの上で伸びをした。
「注意する権利を手に入れたな。」
「ミカエル。やっぱり気がついた?他の騎士はどんな反応だった?」
「うーん、一人は別に何も考えていないようで、もう二人は諦め、残りの一人は笑った。」
「笑うのはちょっとおかしいね。 誰だった?」
「第3皇女の専属騎士だ。」
「ああ···ハルシュテン卿ならまあ。 ちょっと変わったホムンクルスだよね···。」
するとメイドがイヴに話しかけてきた。
「殿下、ハルシュテン卿が再びやって参りました。」
「ハルシュテン卿?どうして?」
「第3皇女殿下が落としたリボンを取りに来たそうです。ここにはないと言ったのですが、必ず直接確認しなければとのことで···。」
「···入りなさいと伝えて。 この程度のことなら、そのまま受け入れたほうがいいわ。」
するとハルシュテンが部屋に入ってきて、満面の笑みであいさつをしてきた。
「イライザ・ハルシュテンが第7皇女殿下に再びお目にかかります。」
「早くリボンがないことを確認してちょうだい。」
「余計な疑いを防止するためですから、広い心でご理解をお願いします。」
そしてハルシュテンは部屋を見回し、イヴに振り返り言った。
「ふむ···。私が見間違えたみたいです。ご無礼お許しのほどを、殿下。これで席を外させていただきます。」
するとそのままイヴの足元に跪き手を取った。
そして長い長いキスをした後、イヴの手の甲を甘噛みした。
「!!?!???」
(何よ今のは!?!?!?)
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