引用:
皇女、反逆者に刻印する
あらすじ
人造人間「ホムンクルス」の反乱によって滅びたハーデルラミド皇室。第7皇女イヴは妹の裏切りによって1度は命を落としたものの、錬金術の力で8年前の世界で再び目を覚ます。 イヴが皇室滅亡の未来を変えるための方法―それは皇室を滅亡に追い込んだホムンクルスの王・ミカエルを自らの専属騎士にすることだった。 皇女と反逆者、前世ではすれ違ってばかりだった2人が向かう未来とは——!
本文
イヴの部屋にはミカエル、セデラーとメイド達が集まっていた。
「夜の市中の問題に言いがかりをつけるだなんて。皇居の噂を気にすることができなかった私のせいです。 殿下。」
「しょうがないよ、セデラー。 言いがかりなのにどうやって。」
「言いがかりも言いがかりです。 そんなひどい侮辱を受けたのには私の責任もあります。今後は、殿下が無用なトラブルに巻き込まれないよう、居場所の管理を徹底します。」
「私達もです!」
メイド達もセデラーの言葉に頷く。
「そうね、みんなありがとう。」
「もうすぐ夕食の時間ですので、お風呂にゆっくり入っていただいてはいかがでしょうか? 色々なことがありましたから。」
「…そうしようかな。」
「それなら、せっかくですからアグニト卿と一緒にお食事されてはいかがですか?」
「うん?…えっと、アグニト卿さえよければ?」
(寝室で、2人きりで食事を···? …まあ、これも専属騎士の仕事の延長線だろう。)
「了解致しました。」
ミカエルがそう言い立ち上がると、メイド達がお互い目配せをし合った。
「それでは、アグニト卿も洗わなければならないですね!」
「?」
「そうですよ!」
「さあ、こちらへどうぞ。 アグニト卿!」
そしてキョトンとしているミカエルをメイド達があっという間に引っ張って連れて行った。
ーーー・・・
ミカエルはメイド達に念入りな身支度をされた後、清潔な真っ白いシャツに黒いスラックス姿でイヴの寝室へと向かった。
(どうりで使用人たちの呼吸がよく合っていた訳だ。皇居式の名誉挽回をするには、これが最善だろうから···特に腹は立たないけど、皇女が指示したのか気になるな。)
「アグニト卿、準備ができました。」
「分かった。」
セデラが扉を開け、ミカエルはイヴの寝室へと入った。
「ようこそ、ミカエル。」
イヴは満面の笑みでミカエルを迎えた。
そして二人は向かい合って食事をした。
「美味しいですね。」
「そう? これからもたまに一緒に夕飯を食べようか?」
「···殿下のご希望であれば。」
「うん、一緒に食べよう。」
イヴは上機嫌だ。
(…どういうつもりなのか···。)
ーーー・・・
「···今は第6皇女、第6皇子を大人しくさせるだけで十分だから。監視ゴーレムの記録を公開するつもりはない。第3皇女と正面対決するのも時期尚早だし。」
「監視ゴーレムは殿下がずっと保管するつもりですか?」
「うん。一旦飛ばないように鳥かごの中に入れておいた。」
監視ゴーレムが鳥籠の中で暴れている。
「向こうにいるでしょ?」
「皇室の資産を不法占有しているわけですが、大丈夫でしょうか。」
「儀典部にアルベンがあるじゃない。 監視ゴーレム一つくらいなら大丈夫よ。」
「ああ。それでもずっとああしておくわけにはいかないじゃないですか。」
「そうね。誰かが私の部屋に来て発見しては困るし、閉じ込められている姿が可哀想でもあるし。心配しないで。使い道は大まかに考えておいたわ。後で時間がある時に処理するよ。」
イヴはワインをぐっと煽った。
「お茶は私が勝手にやるから、二人はもう休んでいいよ。」
イヴはそう言い、二人のメイドを下がらせた。
「はい、殿下。おやすみなさい。」
(もう寝ろって。まだ時間が早いのに?)
ミカエルが困惑していると、イヴは自ら紅茶を淹れ、ミカエルに差し出した。
「さあ、みんな出て行ったからゆっくり話そうか。」
ミカエルはイヴが淹れてくれたお茶をじっと見た。そして邪念を払った。
(こんなに清いお茶とは。そうだ、皇女にそんなはずがない。 訳もなく私が思いついたような・・・・・)
「ミカエル。お察しでしょうが、提案したいことがあるの。」
そしてイヴはミカエルを見つめながら言った。
「今夜、私の部屋で休まない?」
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