引用:
悪女は2度生きる
あらすじ
謀略の天才、皇帝を作り上げる! ”お兄様が成功すれば、お前も成功するのよ” それを信じ、あらゆる悪事を企てた悪女「アルティゼア」。 しかし、彼女の兄への忠誠は裏切りとして返ってくる。 死を前にした彼女に手を差し伸べたのは宿敵であり、正義ある大公「セドリック」だけだった。 魔術で命と引き換えに18歳の自分に生まれ変わった彼女は、「セドリック」を皇帝にするために新たな人生を捧げることにするがーー
本文
「妻を放せ。そうしたら苦しまずに殺してやる。」
セドリックは剣を構え、カドリオルを睨むように言った。
それに対しカドリオルも懐から小刀を取り出し、少し笑いながら言った。
「現実はどうしたって離した瞬間死ぬようだが。どう思う、ローサン侯爵?今、君の首に刀を突きつけて脅かせば、この恐ろしい状況を脱することができるだろうか。」
「冗談言ってる場合じゃないですよ···。」
すると急にセドリックがカドリオルに剣を向け攻撃した。
カドリオルは小刀で防ぎ、攻撃し返した。
「会話中に攻撃するのは…礼儀がなってないな!」
カドリオルは腰に挿している銃を取り出し、セドリックに向かって発砲した。
しかしセドリックはギリギリで避けた。
「ちっ。」
カドリオルはティアの手を掴み、セドリックの方に押しのけた。
「ティア!」
「殿下…。」
セドリックはティアの手を取り後ろに隠した。
「お前だって俺を殺したいと思うんじゃないだろう?」
「けんかの途中で吠えることは犬でもやらないことだ。」
セドリックとカドリオルは睨み合い、一触即発の雰囲気だ。
それを見てティアは後ろから、セドリックの腰に手を回した。
「お待ちください!」
「ティア?」
そしてカドリオルに向かって叫んだ。
「行ってください!」
「俺に敵を前に逃亡しろって言うのか!」
「エブロンでエブロンと戦うつもりですか。 おかしくなりましたか?領地全体が敵だと、思う存分知っているではないですか!」
セドリックはティアの方を向いた。
「ティア。」
「見逃してあげてください。今死んではいけない人です。お願いです。私を信じてください。」
「………。」
セドリックはもう何も言わなかった。
「ローサン侯爵。」
「約束は守ります。信じられないのなら、皇后陛下の名をかけて誓います。」
(···皇后陛下の名前だったら…聖女の名をかけるということだな。 それなら信じられる。)
「侯爵の言葉が正しい。 エブロンでエブロンと戦うことはできないよ。」
(それから海の上ならいざ知らず···土の上で帝国の盾を壊すことは難しい。)
「また迎えに来る。」
カドリオルはそう言うと逃げていった。
ーーー・・・
港町市場の屋敷にて。
「港の封鎖を解き、本城に妻が無事であることを知らせろ。 のろしを上げて警戒態勢を解くように。」
セドリックは連れてきた騎士達に指示を出した。
そしてティアを抱き、屋敷に入っていった。
「大公殿下!無事でよかったです妃殿下も怪我をされた所は···」
「寝室はどこだ?」
「上にあります。後は私どもにお任せください。 殿下もお疲れでしょうに···」
「もう結構だ。下がれ。」
セドリックは終始険しい顔をして、屋敷の者を追い出した。
部屋に入るとティアをソファに下ろし、剣などの装備を全て外すと、ティアの前のソファに腰掛けた。
セドリックはその間ずっと無言で険しい顔をしていたので、ティアは恐る恐る声をかけた。
「殿下…。どうやって···ここまで···来たのですか?」
「どうやって?それではあなたが拉致されたという知らせを聞いて、のんきに狩りでもしていたと思いますか。」
「いえ、そうではなく、本城が···。」
「あなたにはそれがもっと重要ですか?」
「え?」
するとセドリックはティアの前まで来て、ソファの肘掛に手を置いて囲いこんだ。
そして静かにティアに問いかけた。
「私に他に言いたいことはありませんか?」
↓ エピソード全話一覧はこちらです!(最新話から最終話まで)
www.picco-comic-netabare.work