引用:
皇女、反逆者に刻印する
あらすじ
人造人間「ホムンクルス」の反乱によって滅びたハーデルラミド皇室。第7皇女イヴは妹の裏切りによって1度は命を落としたものの、錬金術の力で8年前の世界で再び目を覚ます。 イヴが皇室滅亡の未来を変えるための方法―それは皇室を滅亡に追い込んだホムンクルスの王・ミカエルを自らの専属騎士にすることだった。 皇女と反逆者、前世ではすれ違ってばかりだった2人が向かう未来とは——!
本文
イヴとミカエルは、ロジーと対峙していた。
(刻印式の前だけ気をつければいいと思ったのに。 いや。今ミカエルは顔を隠してるし···。ただ一度ちょっかい出してみるだけだよ。 たまにあることだった。帝国の白バラの手の甲に口付けする栄光を、主人なんかはたいしたことないと思うはずだ。幼稚すぎるわね、ロジー!)
だがミカエルはロジーの思うがままに、手の甲にキスをした。満足そうに笑うロジー。
「皇女殿下に再度ご挨拶申し上げます。」
「お会いできて嬉しいです。 アグニト卿」
(こんな風にロジーとミカエルを絡めたくなかったんだけど···。)
ミカエルのことをちらりと見ると、ミカエルは顔を拭くフリをして手袋で唇を拭った。
(…うん?拭いた?!)
「お前じゃないのが不愉快で。」
ミカエルは小さく微笑み、その様子にイヴは吹き出した。
ーーー・・・
皇帝陛下が会場に入ってきた。
『皇帝陛下がご入場です!ハーデルラミドの太陽に祝福と栄光を!』
「誕生日おめでとう、ロージー。」
「陛下、来てくれたのですね!」
「政務のせいで長居はできないがな。」
「何をおっしゃるんですか、 お父様。 私のために宴会を開いてくださって、貴重な時間まで割いてくださったんですね。」
ロジーがそう言った。
すると陛下は隣にいるイヴに気がついた。
「皇帝陛下にお目にかかります ハーデルラミドの太陽に祝福と栄光を…」。」
「イヴ、お前も参加していたのだな。」
「はい、お父様。 ちょうどロジーにお祝いをしていたところでした。」
「おお、この頃健気だな、 まったく。」
「ところで、ロジー別宮の東に典物が準備されていた。 白いバラで庭園をつくったのだ。」
「なんてことかしら!恐れ入ります。 お父様!」
『やはり第8皇女殿下は寵愛されてますね。』
『 それに比べて第7皇女殿下は…。』
陛下と皇女達の様子を見て、さっそく噂話し始める貴族達。
(やれやれ、よりによってこんな時にロジーの傍にいるなんて。騒ぐのが好きな人たちが狙わないはずないわ。 それならそうね、愛されることのできない悲運の皇女のように振舞うのがいいわね。)
陛下とロジーを見つめ、悲しげな表情をするイヴの様子に同情する貴族達。
可哀想な皇女という演技をしていると、ミカエルが手を握ってきた。
(ミカエル…?こんな些細な問題にも私の味方だということを知らせてくれるね。)
周りの様子を見て陛下がイヴに話しかけた。
「ごほん。やりたいことがあれば言ってみなさい。 イヴ、お前の専属騎士の任命を称える意味で、褒美をやろう。」
「まあ、本当ですか。」
「ほほう。そんなに驚くとは。 急なら考える時間を与えよう。」
「違います、お父様。 ちょうど必要なものがありました。住居を移したいのです。 」
「うん?住居?今の住まいが気に入らないのか?」
「僭越ながら小さくて少し不便です。パウダールームがあって服やアクセサリーを保管でき、日当たりの良いバルコニーがあって、皇宮の美しさが鑑賞できる部屋であれば幸いです。」
「ちょっと待て、なんだって? じゃあ今の部屋にはパウダールームがないのか?」
「はい、そうです。」
「皇女の部屋にパウダールームがないのか?! 皇室の官吏たちは一体何をしているのだ!?今すぐあいつらを@#$%」
すっかりご立腹の陛下。
(娘を今まで放置したのが恥ずかしいのでしょうね。)
放ったらかしにされてイライラしているロジーに気付き、
「お父様、今日はロジーの誕生日じゃないですか。 嬉しい日なのであまり怒らないでください。」
「ふん、お前の言う通りだ。 ロジーの誕生日だから我慢せねば。 ふむ·············そうだな。 第7皇女、イヴィエンヌ・クロエル・ハーデルラミドに、東の離宮にある『新緑の部屋』を下賜する!」
陛下がホールでそう宣言したことにより、第3、第8、他の皇女達にも衝撃が走った。
周りの貴族もざわざわとしている。
「名のある部屋って···。」
「 庭園よりも寵愛をもっと深い象徴するものなのに···。」
「今まで名前のある部屋を与えられたのは第3皇女殿下だけじゃないですか。」
「恐れ入ります。お父様。」
「そうそう。 住居を移したら一度見に行くよ。」
「いいお茶を用意しておきますわ。」
(まさか本当にお越しになると?)
疑いの目を向けるイヴに対し、陛下は至って和やかな感じだった。
「では、残った時間も楽しんでほしい。」
陛下はそう言うと会場を後にした。
残った皇女達を見て貴族達がこそこそ話している。
「···どうやら第7皇女殿下を皇帝陛下が気に入ったようですね?」
「興味がありますね。」
「ええ。これから勢力図が変わるかもしれませんね…。」
イヴと皇女達の継承争いが始まる。
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