引用:
悪女は2度生きる
あらすじ
謀略の天才、皇帝を作り上げる! ”お兄様が成功すれば、お前も成功するのよ” それを信じ、あらゆる悪事を企てた悪女「アルティゼア」。 しかし、彼女の兄への忠誠は裏切りとして返ってくる。 死を前にした彼女に手を差し伸べたのは宿敵であり、正義ある大公「セドリック」だけだった。 魔術で命と引き換えに18歳の自分に生まれ変わった彼女は、「セドリック」を皇帝にするために新たな人生を捧げることにするがーー
本文
「びっくりしたじゃないですか。 そこで何をしているんですか?大公妃殿下の侍女になったと聞きましたよ。それと、マーガレットおばさんが探していました。」
「殿下と何の話をしたの?」
唐突な質問にリシアはきょとんとした。
「……え?別に大したことは…。 大公殿下がお悩みがあるようで、少しお話を聞いていただけですよ。」
「なんであなたに?」
「言いたくなった時に私が近くにいたからでしょう。」
「彼女のせい? 」
「はい?」
「やっぱりあの女の人のせいでしょ? そうよ、 私がそうすると思ったんだ。」
ティアをあの女呼ばわりし、見下した様子のオーブリー。
オーブリーの横暴な態度にリシアはすぐに悟った。
(妃殿下は賢明な方だから、すぐに彼女がどんな人間であるかに気付いたでしょうね。)
「それで、何だって? 私についての話はなかったの?」
「彼女って、まさか···。妃殿下のことをおっしゃるのではないですよね?」
「私が何か言い間違えた? なぜそんな卑しい女を褒め称えるの!??」
「オーブリーさん! なんでそんなことを言うんですか? 妃殿下は···」
「なに!!私がよくないこと言った? 正直、ローサン侯爵夫人だからどうしたって言うのよ!彼女の母親が皇帝の情婦だということを誰も知らないとでも?彼女は先代侯爵の娘だそうだけど、実父は誰も知らないんだってね?」
「お姉さん、言葉に気をつけてください。」
「確かに、普通の女じゃないわよね。 親もそんな女なんだけど、何を学んだのかしら?」
「今あなたは妃殿下はもちろん、大公殿下まで侮辱しました!」
「おい、 偽善者ぶるのやめてよ。おぞましい。」
オーブリーは憎しみがこもった目でリシアを見た。
「下の人だからといってその女性の罪を言うなと言うの? 彼女はどんな偉い女なの?」
オーブリーは宝石箱を持たされた時のことを思い出し、怒りでふるふる震えた。
(家具よりひどい扱いでずっと立たされて、下女なんかに無視されて···! 気分が悪い。セドリック様も私を家族のように思ってるのに、大公妃なら当然尊重すべきだ。ジョルディン伯爵家の令嬢のこの私にどうしてこんなことができるの···!!)
「大公殿下はいつもエブロンのために最もふさわしい人を選ぶと言っていたわ。 彼女がエブロン大公妃で良いとでも言うの?」
「オーブリーさん。本気であの方が大公妃として不適切な問題点があって、それをお姉さんが知って、殿下のためにおっしゃりたいのなら、どうして殿下に直接申し上げることができないでしょうか?」
「なによ!」
「今宴会場に入って皆の前で大公殿下に忠言してください。 いいチャンスじゃないですか。」
「彼女が私を最初から宴会場にも入れないようにしたからよ!!」
興奮するオーブリーに、リシアは静かに首を振った。
「いいえ、それは違います。さっきまで殿下がこの席にいらっしゃったのに、お姉さんは出られなかったじゃないですか。忠言すると正式にお伺いすれば大公殿下が断るはずがありません。そうせずに妃殿下を侮辱して非難し、 私を捕まえて後ろで悪口を言うお姉さんは堂々としてるのですか?」
「この…!」
オーブリーは逆上してリシアを殴ろうとしたが、リシアにあっさりとかわされ腕を掴まれる。
「無駄なことは考えないでください、オーブリーさん。あなたがこうするのは、 よく考えてみると答えがすぐに出ますが嫉妬のせいですよね。」
「うっ…。」
幼い頃に、セドリックと仲良さげに戯れるオーブリーと自分の姿を思い出した。
「殿下はありがたい事に、私たちを実の妹のように可愛がってくださいました。 しかし、それは私の両親、また叔母と叔父が心を込めて殿下に仕えたからです。オーブリーさんが、 特別だった訳じゃないです。」
「離せ!リシア!彼女に何を言っても関係ないだろ!」
「妃殿下はお姉さんへの情を必要としない方です。 大公殿下が直接選ばれたこの地の女主人ですから。」
「痛い…離せ!!」
「いいえ、離すことはできません。 お姉さんが何をするか分からないからです。お姉さんが妃殿下の事をこんなに声を出して侮辱した以上、もうお姉さん一人だけのことではありません。大公殿下にこれ以上迷惑をかけないよう、放っておくわけにはいきません。」
「離して!!」
オーブリーが必死になって逃げようとしていると、騒ぎに気付いた伯爵夫人がこちらへ走ってきた。
「オーブリー!!オーブリーあなた!一体こんな格好をしてどこに行って何をしようとしたんだ!来なさい!!」
「お母さん! お母さんまでどうしたんですか!私が何を間違ったと言うの! あの女が殿下の伴侶だなんて認められないよ!」
伯爵夫人は引きずるようにオーブリーを連れてその場を去った。
ーーー・・・
その夜、オーブリーはエブロン寺院にいた。
(悔しい···!! 何も悪いことしていないのに!)
昼の騒動の後…
『ジョルディン家はこれまで大公家の忠臣であり、殿下からも絶大な信頼を受けてきた。 お母さんにもお父さんにもそれが一生の自慢だった。ところが、お前一人のせいで我らの家門は終わるわ。 もう放っておくわけにはいかない。』
『私が何を間違ったのです?』
『侍女になった身で妃殿下が引き受けた宝石箱を床に投げ捨て、寵愛する下女の頭をケガさせたのよ。それに加えて妃殿下に対する許せない暴言。もし聞いたのがリシアではなく、騎士団の人だったら、その場でお前の首が飛んでいただろう。私が自分の子供をこんなふうに育てたなんて…。 あまりにも後悔しているよ。』
『私の方に過失はありません。 言えないことを言ったとも思っていませんし。』
『…寺院に行き、雪が止んだら修道院に行きなさい。 そこで一生出てこないで反省しながら生きなさい。妃殿下が目の前からいなくなるだけで許してくれると仰ってくれて、どんなにありがたいことか。』
『お母さん!!お母さん!!』
ーーー・・・
(一体何が足りなくてセドリック様は私に話しかけてくれないの···!!)
するといきなり部屋のドアが乱暴に開かれた。
「!?誰なの!?」
何人かの男が部屋に入ってきて、代表のような赤髪の男が言った。
「俺は南海から来た者だ。」
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