あらすじ
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた! アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。 そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。 その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。 アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。 最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
(本文)
「···カシス・ペデリアンです。 」
「青の貴公子でしたね。 お会いできて光栄です。そして、助けていただいてありがとうございます。」
「いえ···許可いただければ、ごあいさつを。」
「…喜んで。」
あいさつの許可を貰うと、カシスはロクサナの手の甲に口付けした。
そしてロクサナの事を上目遣いでじっと見つめた。。
「青の貴公子の名声なら私もよく存じております。 兄妹間の他愛ない争いをお見せして恥ずかしいですわ。」
「兄妹間の他愛ない争いですか···。」
「はい、ですから青の貴公子が気を使う必要はないことです。」
「そうですか。」
「ええ。いつのまにか夜が更けましたね。 私はもう部屋に戻らなければなりません。青の貴公子は再び宴会場へお戻りください。 では私はこれで失礼します。」
ロクサナがそう言うと、カシスが肩にマントをかけてくれた。
「夜風が冷えるので羽織ってください。昨夜差し上げたものと同じように···これも返さなくても大丈夫です。」
カシスは口元に笑みを浮かべながら言い、その場を立ち去った。
昨夜マントをかけてくれたのはデオンではなくカシスだった。
ーーー・・・
カシスと別れたロクサナが部屋に戻ろうとすると、
「あの···アグリチェ嬢?」
(銀色の髪?)
「首長が…これを必ずアグリチェ嬢に プレゼントしたいとおっしゃって、 僕が代わりに来ました。」
(いや、白髪ね。)
先程会場でノエルの傍に居た白髪の男性が、なぜか顔を赤くしながら花束を手渡してきた。
「感謝していると伝えてください。」
「あ、えっと···! えっと···ちょっと待って!」
ロクサナはそう言うと、白髪の男性を置いてさっさと部屋に戻っていった。
花束をもらったが、ロクサナは他のことを考えていた。
(カシスがついに表に出てきたということは…時が来たという意味。)
「もうすぐ盛大なパーティーが開かれるでしょうね。」
ーーー・・・
ロクサナがラントの部屋を訪れた。
「お父様、今すぐアグリチェに戻らなければならないようです。」
「何があった?」
「先程デオンお兄様にお会いして聞いたんですが、お父様がいない隙にポンタインお兄様が反乱を起こしたとのことです。」
「なに!?!まだベルティウムに会ってもいないのに…。はあ。今すぐ…アグリチェに戻る。」
ラントは馬車で邸宅に戻る準備を急いでし始めた。
ーーー・・・
カシスは、馬車で宴会場を去るラント達を部屋の窓から見ていた。
「坊ちゃん、ラント・アグリチェがたった今会場を離れたそうです。」
「準備は?」
「指示された通りにすでに終わりました。」
「そうか。」
カシスが窓の外を見ながら部下と話をしていると、シルビアが部屋に入ってきた。
「お兄様!ちょっと待って!」
「…シルビア。」
「お兄様、体に気をつけないといけませんよ。 分かった?」
「そんなに心配しないで。お前はお父様と一緒に帰ってくれ。 仕事が全部終わったら私もすぐにペデリアンに行くから。 」
「うん。」
「先に行って待っていて。」
それでもシルビアは心配そうにカシスを見送った。
(さあ、いよいよ時が来た。)
「今すぐ出発する。」
(あなたに初めて会った・・・アグリチェへ。)
〜シーズン1完結〜
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