(本文)
「あの···お嬢様。 なぜ部屋にばかりいらっしゃるのですか。 お嬢様の顔を見たくてたまらない方々が多いようです。」
「さあ、別にそうでもなさそうだけど。 去年も外に出ていたけれど、誰も私に近付かなかったわよ。」
「それは…。」
(みんなの目が眩しい…)
「アグリチェ嬢よね…。」
「今目が合ったぞ。」
「美しいわ。」
ロクサナには下の階にいる人達のひそひそ話は聞こえないようであった。
(来たわね。ガストロ家の跡継ぎ…。)
昨年、この和平会に来て直接顔を確認したのはリュザーク・ガストロだけだった。
(退屈だな。黄のベルティウムは今度も参加しなかったのね。残りはガストロと…青のペデリアン、そして···魔手と交感する能力を持つ、白のフィペリオン家。フィペリオンのオルカは「白衣魔手師」という別称を持つ人物だ。 魔物に関心が高い彼が、冬になると動きが活性化する、特異な魔物の生息地を追いかけたため、これまで一度も和合会に顔を出したことがないし。)
(!赤毛と紫の瞳…あの人がリュザーク・ガストロね。確かに小説の主人公らしく見えるわね。やっぱり小説の中のままなのね。 リュザークは女性嫌いがあるという噂が…。)
リュザーク・ガストロがロクサナの近くを通り過ぎようとした時、ロクサナをぎろりと睨んだ。
(さて、私が彼に何をしてあんなに睨むのかしら。)
「何だ、お前は。 そんなにうちの姉ちゃんを睨んで。死にたくて気がおかしくなったのか。」
「私に言ってるのか?そういうお前は···そうか。 お前もアグリチェ家なのか。 話しぶりがなかなか生意気だな。」
「私の話しぶりを見て馬鹿にする前に、お前の目つきの確認でもしろよ?」
(ジェレミー、昨日からむずむずしていられないのは、主人公のリュザークみたいだけど···あからさまに喧嘩を売っているわね。 このような露骨な挑発にひっかかるような男じゃ···)
「小僧。その舌を抉らないと黙れないのか?」
(うーん、違ったかな?)
「ジェレミー、ケンカはやめてこっちへおいで。弟が私を大事にする気持ちで失礼を犯しました。」
「あんな手のかかる奴が弟だなんて、可哀想に。」
「先に私に無礼を犯した者たちにだけ凶暴になるだけで、元々は可愛い子なんですよ。私もそろそろ失礼します。 結束と和平のための場であるだけに、残りの時間、どうぞ意味のある時間をお過ごしください。」
ーーー・・・
「お嬢様、青のペデリアン一行が城に到着したそうです。 黄のベルティウムの頭首も。」
「そうね、お父様に会いに行かなきゃ。 準備するわ。」
(いよいよ…)
ーーー・・・
「お前は先に部屋に入っていなさい。 シルビア。」
「はい、お父様」
(小説の中のヒロインの登場ね。)
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