あらすじ
目が覚めるとベッドに見知らぬ裸の男たちが!? そう、誰かがプレイ中の逆ハーレムゲーム内の悪女に乗り移ってしまったのだ! 不思議なことに、ゲームのプレイヤーの選択肢と選択内容を盗み見ることができてしまう。 そして、ゲームの主人公であるユリエルが、悪女キャラである自分の愛人たちと親密になり、最終的に自分を殺すつもりであることを知ってしまう… 果たして死を免れ、ゲームの中から無事に脱出することができるの!?
(本文)
「姫様〜!!こういうものはいかがですか〜!?それとももっと大きくて派手なものにしますか!?他国でプレゼントされた珍しい宝石とか!」
「デイジー、そんなに大騒ぎしないの。今回はすぐ戻ってくるんだから。」
「だって今日は姫様の誕生日の宴会なんですよ〜!?姫様、違うものを選んできますね!!」
(ユリエルに関する決定をこれ以上先送りにできない。少しでも早く解決してこれからの事を考えなきゃ。だから今回のパートナーは…。)
「姫様、こちらのネックレスはいかがですか?」
「!」
同じ部屋にいたヘスが、真っ赤なルビーのトップがついたネックレスをリアに勧めてきた。
(ヘスがこうやって話しかけてくるなんて珍しいわね。そういえばヘスは私が皇女になってからずっと傍にいてくれたわね。以前の皇女の薬物に関する問題もあったから、しばらく疑っていたけど…。なかなか隙を作らないというか、もう少し仲良くなれたらいいんだけど。)
「じゃあこれにしようかな。」
「姫様!私のおすすめはこれです!!」
「デイジー、それはまた今度にするわ。」
「私がネックレスをお付けします。」
リアはデイジーをたしなめ、ヘスにネックレスをつけてもらい立ち上がった。
「じゃあ行ってくるわね。」
「姫様。お迎えに上がりました。」
「!」
廊下に出ると、宴会場までエスコートする為にエクロットが待っていた。
「なぜ騎士服を着ているの?身分も戻ったから貴賓として参加するのだと思っていたのに。」
「姫様の誕生日ですので、帝国の貴族たちがたくさん皇城に集まるはずだから、警備を強化するよう陛下から命令がありました。」
(陛下はまたエクロットを牽制したのかしら?)
「姫様、私も一つお伺いしたいことがございます。本当にカラントにこの国の宰相の座を任されるおつもりですか?」
ーーー・・・
昨日の夜、フェイシス邸でのこと。
リアとエクロット、机を挟んでカラント・フェイシスが顔を合わせていた。
『姫様がこのようにお忍びでいらっしゃるのでびっくりしました。それで、おっしゃりたいことはなんですか?』
『姫様にそんな無礼な…!』
『いいわ、エクロット。前の会議で会って、直接話すのは初めてね。単刀直入に言うわ。私の味方になって、この国の宰相になって欲しいの。』
『…なんでよりによって私なんですか?私は姫様が何年もないがしろにしてきたフェイシス家の人間です。最近エクロットを解放してくださったようですが、まさか今になって彼を愛するようにでもなったのですか?』
『カラント!!!』
『それで、姫様が汚した私達の家門の名をまた立ててあげるおつもりですか?』
『私の見る目がなかったかしら。カラント卿なら自分の価値をもっと知っていると思ったのに…。そう、私がエクロットを愛人として選んだ後、家門の名誉は地に落ちた。しかしそんな今、こんな荒城ですら解決できなかったモミナート家と帝国上層との紛争をフェイシス家が交渉した。それによってドミナート公爵がフェイシス家を敵として、攻撃することができないというのも事実だ。そしてエクロットが復帰した今、再び縁を結ぼうとする人々がこの城に足を運ぶことが絶えないそうだけど、それは本当かしら?』
『…事実です。』
『このような複雑な権力関係でなくても、カラント卿の能力は領土交渉会議の時私の目で確認したわ。私はこの国でたった一人の皇女で、唯一の皇位継承の後継者なの。愛や罪悪感でこの国に必要な宰相を選ぶことはない。さあ、今度は卿が私の問いに答える番よ。』
ーーー・・・
「そうよ、本気よ」
「姫様が私の家の状況をご存知だったとは思いませんでした。私にはお聞きにならなかったでしょう。」
「それは…。」
(皇女としての姿を見せるためにそう言ったものの…。エクロットの事情を聞いて、罪悪感で周りを見るようになったからね!!)
「私に聞いて欲しかった?」
ーーー・・・『今になって彼を本気で愛するようになったのですか?』
「私にそんなことを言う資格はございません。」
(本当にエクロットは高い忠誠心を持っているわね。)
「私も聞きたいことがあったの。」
「はい、姫様。」
「昨日ロビアとはどうして一緒にいたの?」
「…彼が私を尋ねてきました。」
「!…ロビアが?」
「はい。そして私に…姫様の誕生日の前に、先日追い出したメイドの動向がおかしいので姫様を守って欲しいと頼んできました。」
(ロビアはエクロットを嫌がっているのに…。ロビアが信じられないわけじゃない。ただ、私は…。ロビアに会おう。この宴会が終わったらすぐに。)
ーーー・・・
「リア、誕生日おめでとう。」
「いらっしゃいましたか、陛下、皇后様。」
「おめでとうございます、皇女。」
「宴会は楽しんでいるか?あれは全部貴族たちから君に捧げる贈り物のようだ。」
贈り物が山のようになっている。
「はい、量が多いので宮に帰ってからゆっくり見てみます。」
「そうするといい。」
「陛下、今日は早めに帰…。」
リアが言いかけたその時、会場がざわめいた。
「ドミナート・アルケンが来たぞ!」
「姫様との騒動があったと聞いたけど…?」
「騒動って?どうせ一方的にフラれたんでしょう?」
「でもあの一緒にいる娘は誰なの?」
リアは目を見開いて驚いた。
ドミナート・アルケンにエスコートされて階段を降りてきたのは、真っ白なドレスを着たユリエルだったのだ。
そしてにっこり笑って言った。
「お誕生日おめでとうございます、姫様。」
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