あらすじ
目が覚めるとベッドに見知らぬ裸の男たちが!? そう、誰かがプレイ中の逆ハーレムゲーム内の悪女に乗り移ってしまったのだ! 不思議なことに、ゲームのプレイヤーの選択肢と選択内容を盗み見ることができてしまう。 そして、ゲームの主人公であるユリエルが、悪女キャラである自分の愛人たちと親密になり、最終的に自分を殺すつもりであることを知ってしまう… 果たして死を免れ、ゲームの中から無事に脱出することができるの!?
(本文)
「何と仰ったんですか…?」
「宮に荷を移せと言った。」
「姫様…!私はまだ未熟で…父や扶養すべき家族がいます…あ!そして私には持病が…!」
「大丈夫。お金は十分あげるから心配しないで。」
「で、伝染病が…!」
どうしても宮に住むのが嫌なのか、焦りながら必死に言い訳をするタス。
「そう?それは困るわね。あなたを補佐官にしようと思ったんだけど、残念ね。」
「え?」
「お前を独房にでも入れると思った?それとも寝室に呼ぶとでも?」
「え…?え?」
「残念ながら、あなたは私の好みではないわ。もう…」
タスの勘違いに、リアがため息を吐きながら呆れていると。
「姫様〜〜〜!!!!」
「そうやって走っていると転ぶわよ。」
「その、準備する時間が少ないのに姫様が見えなかったので!!やる事がたくさんあるんですよ!」
「ヘスはどこへ?」
「ヘスさんは大事な用事があると、午前に城の外へ行きました。」
「ヘスが色々仕切っているから、すごく忙しいみたいね。さてデイジー、私が言ったことはちゃんと伝えてくれた?」
「はい!!ちゃんと伝えました!それより早く行きましょう姫様〜!!」
「分かった分かった。タス、そなたも着いてきなさい。」
「…はい。」
デイジーはうきうきで、その場から逃げたかったタスは半泣きになりながら、リアの後を着いていくのであった。
ーーー・・・
「あの噂が本当だったなんて、皇女様はどうお考えなんだ。」
「どこの王子だって?」
「戦利品の癖に、孤高のフリをするとは。」
「騎士の名誉があって体を売ったやつらと同じ…」
「面白そうな話してるなあ?俺も入れてくれよ。」
宮に戻ってきたエッセンの事を、周りの騎士がヒソヒソとバカにしていると、シガーが高圧的に話に割り込んできた。
「なあ?さっきの話もう一度…いてて
!」
「もうすぐ始まるのに…真っ直ぐ立っていなさい。」
彼の上司のレオ・ディペットに耳をつままれ、シガーはふてくされる。
宴が始まると、司会の騎士が、皇帝陛下のお言葉を皆に伝えた。
「エクロット・フェイシス卿の功を認める。皇女、エルドリア・ビオッテ・セシリアへ、私に代わって彼の功を称えることを命じる。」
「はい。エクロット・フェイシスは剣を受けよ。」
「この国の剣をもって、命を捧げて忠誠を尽くします。」
リアは剣を構え、エクロットは跪き凛と答えた。
エクロットと共に戦争に出ていた騎士たちは、エクロットの功が認められた事で喜び、盛り上がった。
「うう…みんなが喜んでいるのが嬉しい。」
彼の上司、レオ・ディペットに関しては、泣きながら喜んだ。シガーはそれを冷めた目で見ていた。
「よい。もうすぐ皇女の誕生日を迎える。もう一度大きな宴会を開く!」
最後に、皇帝陛下が盛り上がる会場を締めくくった。
「皇女は変わったな。エクロット卿が帰ってくるまでいろいろと補佐をしてくれただろう。ご苦労さま。これからも皇女の為に努力せよ。」
「はい。陛下。」
「お、リア。今日はよくやってくれた。」
(なぜロビアがここに…。正体がバレて以来会うのは初めてね。嫌じゃないけど何を言っていいのか分からない…。)
「私は席を外すから、ゆっくり話しをするといい。」
皇帝陛下の無駄な気遣いで、2人きりにされるリアとロビア。
「疲れたからもう帰るわ。」
気まずさから早々に帰ろうとするリアを、ロビアは引き止める。
「姫様。ユリエルは…ユリエルの責任は私が負います。私の真心を証明する機会をください。どうせ今適当に使える人間もいないでしょう?騙されたと思って一度だけ…姫様…。」
「あなたの思う通りにしなさい。」
「はい、失望させません。」
「がっかりしないわ。まだ信じていないから。」
そう冷たく言い放ち、リアはその場を離れた。
(びっくりした。ロビアがユリエルの話を持ち出すと思わなかった。ロビアのルートは完全に閉鎖されたのかな?何はともあれ、ユリエルの件をロビアだけに任せる訳にはいかない。ユリエルを城外に出したのは一時しのぎにすぎず、いつかもう一度向き合うことになる…。)
「あれ…。」
「姫様!」
庭園でナドリカを見つけた。ナドリカはリアがプレゼントした服を着ているようだ。
「思った通り、よく似合っているわ。気に入ってくれたかしら。」
「私もなにかプレゼントしたくて…。」
そう言うと、後ろに隠し持っていた真っ赤なバラの花束をリアに手渡した。
少し照れくさそうに花束を見つめるリア。
「それと、姫様が真心を仰ってくださったように、私も告白したいことがございます。」
「うん?」
「愛しています、リア。」
ーーー・・・
??「アルケン!!!!!また事故を起こしたのか!!!」
アルケンの頬を殴り大声で罵った。
「なんの取り柄もないお前を、三代続いた一人息子でなかったらとっくに追い出している。昔は皇女を利用するのに役に立つかと思ったら…。今回だけは大目に見てやるが、これ以上事件を起こしたら目を瞑れないぞ!」
そう言いいその場を立ち去っていった。
「チッ。いつまで年寄りの顔を伺ってなきゃいけないんだ!」
殺気だち、物に八つ当たりしながら喚いていると、メイドがドアの外から声をかけてきた。
「お坊ちゃま、いらっしゃいますか?…皇女について内密にお伝えしたいことがあるそうです。坊ちゃんが望むことを知っていると…。」
「これが時間の無駄だったらお前から殺してやる。連れてこい。」
「はじめまして、アルケン坊っちゃま。」
「私が望むものを知っていると?メイドごときが?」
「そのようにあまり急がれないでください。私はユリエル・ドラビュー・セシリアと申します。」
そう言うと、ユリエルは不敵に笑った。
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