引用: 悪役の救い手
(本文)
大歓声の中、アズに乗った二人はスタート地点に向かう。
(みんな・・・なんだか自信があるように見える・・・。)
(あそこの二人・・・ドゥンイかな?すごく落ち着いている・・・。誰だっけ?確かに知ってる顔なんだけど・・・。)
様々な顔ぶれの中、銀色の長髪の二人を見つけ、既視感を覚えるジェイ。
皇帝陛下が軽く手をげ、スタートの合図をする。
アゼフ「ジェイ、あまり心配しないでください。私があなたの側にいます。」
ジェイ「はい・・・。」
司会「スタート!!」
司会の合図とともに、勢いよくスタートした。
アゼフ「ハイヤっ!ジェイ!あまり怖がらないでください。乗馬で一番需要なのは勇気と信念です。主人が怖がると、馬にもそれが伝染します。しっかり掴まってください。もう飛びますよ。」
アゼフがそう言った瞬間、ジェイとアゼフを乗せたアズは、ハードルを飛び越えた。
アゼフ「よくできました。」
コーナーを勢いよく駆け抜け、前にいた黒い馬を追い越す。
アゼフ「私たちの前にはもう1チームだけです。」
(彼らはさっきの・・・。明らかに私の記憶に残ってるのに・・・。誰だっけ?)
??『コーディスの乗馬大会で必ず勝たなければならない。それで、皇帝と謁見する機会を作り出す。いくら皇帝でも、大勢の貴族の前で皇子の帰還を要請する我々を受け入れるしかないだろう。』
小説の1ページを思い出したジェイ。
ジェイ「思い出した!銀髪の双子。シスライン兄妹・・・。」
小説はコーディスが開かれた日、アゼフとエリサの出会いから始まった。
しかし、皇帝の勅書で辺境に追いやられた悲運の皇子「アルセスト」が帰還し、二人の運命はもつれ始めた。
(息子を二度と受け入れないかのように追い出した皇帝の意を、絶対的な理由を作って曲げるしかないようにして、アルセストが皇室に帰還するのを助けた人たち・・・。)
アゼフ「ジェイ!これで一週目です!」
そう言うと、アゼフは走るアズの背中から飛び降りた。
ジェイ「ア、アゼフ!」
アゼフ「あなたがここに戻る前に旗を持ってくるから、思いっきり走ってください。」
振り返りそう言い残し、アゼフは旗の方に走っていった。
(ああ、そうだ。今他のことを考えてる余裕はないわ。私一人でなんとか・・・。)
ジェイ「アズ!お願い!」
ジェイは手綱をぎゅっと握り直し、勢いよく走りだした。